天女の眠る庭

天女の眠る庭
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神7
  • 萌×26
  • 萌9
  • 中立2
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
7
得点
88
評価数
25
平均
3.6 / 5
神率
28%
著者
鳩村衣杏 

作家さんの新作発表
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イラスト
朝南かつみ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
価格
¥855(税抜)  
ISBN
9784344812048

あらすじ

硬質な美貌の医師・天宮嶺一郎は、画家を志していた恋人を亡くしてから、心を閉ざして生きていた。そんな嶺一郎に精悍な風貌の日本画家・陣ノ内閑がモデルを依頼してくる。繊細な絵からは想像できないほど傲慢な陣ノ内。強引な抱擁と共に口説かれた嶺一郎は、男の包容力と強さを見せつけられ心を乱される。だが恋人の死の原因が自分にあったのではないかという疑念に苛まれていた嶺一郎は、陣ノ内に惹かれる己の想いに苦しみ、彼を拒絶してしまい…。

表題作天女の眠る庭

陣ノ内閑,自由奔放天才で精悍な風貌の日本画家
天宮嶺一郎,恋人と死別したトラウマを持つ美貌の医師

レビュー投稿数7

古き良きBL感を堪能

亡くなった恋人に囚われた医師と画家のお話。

攻めの陣ノ内は、出会ってすぐ嶺一郎に惚れて強引にグイグイ迫ってくる、古き良きBLの攻め様。嶺一郎の事情が事情なので、こういうタイプじゃなきゃ殻を破れなさそう。嶺一郎の過去の恋人は、良い記憶だけを残してこの世を去っている。それだけに嶺一郎は忘れることもできず、罪悪感を募らせて、いつまでも次の恋に踏み出せない。これをどう乗り越えるのか、とても描き切るのが難しいテーマで期待が高まる。

二人の大きな転機となったのは、飯島の死を思い起こさせるシチュエーションと被る出来事。取り乱した嶺一郎が初めて素直に叫ぶのが良かったし、心理を天女の衣になぞらえた表現も良かった。

本作は二話構成で、一話目は嶺一郎視点。踏み出す決心をして肉体的に結ばれたところで終わっており、これには物足りなさが残る。嶺一郎が飯島の死に向き合うのはここからが本番てとこなのに、あっさり二話目に突入し、陣ノ内視点に移ってしまった。

陣ノ内は、嶺一郎の中で飯島との折り合いがついていないことに気付いていて、彼なりに悩んでいる。「意識は無意識に勝てない」という表現は的確で、嶺一郎の無意識の心理の中にはまだ飯島が住み着いている。
それなのに立花という異分子を登場させ、物語の軸がわずかにズレてしまった。陣ノ内が嶺一郎を渡したくないという話になり、飯島との三角形の印象が薄れている。一話ごとの雑誌掲載の都合上、そうせざるを得なかったのか……。

ラストで一部だけ嶺一郎視点になり、飯島のことを完全に乗り越えて、陣ノ内に気持ちを向ける様子が描かれる。とても感動的で、開放感に似た何かを感じた。このシーンは本当にめちゃくちゃ良かった!それだけに、ここに至るまでの気持ちの変化こそをじっくり丁寧に読みたかったと思う。嶺一郎の一視点でまっすぐ書いてくれたら神だった。

メインキャラのタイプやクサい表現の入れ方などに、古き良きBL感がある。よく知ってるわけでもないのに時代を感じる不思議な読書体験だった。

0

天女を手に入れた男

キました…久々に。
先が気になってグイグイ読みながら、読み終わりたくなくてわざと戻って読んでしまう。そんな作品。

「天女の衣の盗み方」
かっこいい…
物語のトーンとしては「切ない・シリアス」が当てはまるけれど、印象的なのはひたすら陣ノ内なんです。
日英ハーフの陣ノ内はその容姿に反して日本画家。初めて会った嶺一郎(町の医院の4代目)に『あんたは俺の中の天女だ』と。
嶺一郎の心の衣は盗まれた…!読者の私の心も。
嶺一郎には10年前の高校生の時に美術教師に恋をした過去があって、しかもその彼飯島は旅先で事故死してしまっている。過去に囚われて恋心から逃げている嶺一郎は、陣ノ内の発する圧倒的な磁力に必死に抗おうとしている……なんてドラマチックで官能的な2人の「攻防」。
陣ノ内の恋は、ただ嶺一郎と寝たいとかそんな事じゃない。芸術家のパッションのような。
言い争った後、数日連絡が取れなくなった陣ノ内が旅先にいると知った嶺一郎は、また自分を求めてくれる情熱を失ってしまう恐怖にかられ、狂おしく陣ノ内を求める。

「天女の眠る庭」
陣ノ内閑(しずか)の視点。
本編では、嶺一郎がかつて恋した男飯島の回顧展にて、おそらくは嶺一郎をモデルにした遺作のスケッチを目にした2人の動揺や閑のやり場のない嫉妬心、そして閑の絵を買いたいとやってくる空間コーディネーターの出現などで、大きく物語が動きます。
閑と嶺一郎の間に立ち上る飯島の影、嶺一郎がモデルの天女の絵を絶対に売らないという閑、嶺一郎と気持ちが寄り添わず苛立ってしまう閑…
でも嶺一郎は生真面目でスクエアな性格から一歩踏み出してくれる。心の動くままに『離れたくない』と閑に告げる。
続くラブシーンの、なんと官能的なことよ…
挿絵の故朝南かつみ様の描く2人の姿も大変な美しさです。
芸術家の持つ感性、その生き方、恋の仕方、恋に落ちる瞬間を天女の羽衣を盗みたい、なんて表現する男。閑が嶺一郎に寄せる激しくて甘い恋心に陶酔しました。

7

天女に恋をした画家のお話

天女の羽衣のお話って子供の頃に読んだな~と思いながらページを捲りました。陣ノ内(攻)曰く「天女のように」美しい医師・嶺一郎と、彼に惹かれ、彼の裡に秘めた悲しみや悔恨、そしてさらにその奥の優しさや深い愛情をすべて受け止めようと向き合う画家・陣ノ内のお話です。

陣ノ内が画家であるせいもありますが、なんというか…美しい作品でした。色がある(感じる)というのか艶っぽいというのか。また、あらすじの印象よりも内省的な作品ではなく、結構カラッとしていて読みやすいです。序盤ではどこか人間離れしているように思えた二人が、物語が進むうちにちゃんと地に足の着いた大人の男性であり、喜怒哀楽や周囲の人達との絆を大切にする人なんだと分かってなんだかホッとしました。

季節の描写がきちんとあって、それもこの作品の色彩を豊かなものにしているなぁと思いました。

2

乗り越えることの勇気

切なくて凛とした印象の小説。

開業医の受は過去の恋愛で悲しい思いをしていて、後悔もあって忘れられず、恋愛に臆病になっている。
そこへ日本画家である攻と出会い、苦しく切ない想いを抱えながら、乗り越えて大切な人を得る。

そんな受なので、攻は強引じゃなきゃ成り立たないのですが、BLって攻が強引って多いいなぁとしみじみ。
いや、私がそう言うのが好みなのか(^^ゞ

最初はそんな攻に受と一緒になっていらっとしつつ、でも受が再生するには必要な人で、そして、ふたりの絆は深いのだと感じました。

ふたりの気持ちが近づいても、受の過去の出来事の影がつきまとい、その影から抜け出すのはなかなかに難しい。
でも、その苦しさ切なさの先にふたりの幸せが。

攻の描いた美しい妖艶な天女の日本画を鮮明に思い浮かべることが出来ました。
それは素晴らしい朝南かつみ先生のイラストによるところが大きいです。

とても満足感の高い小説でした。

4

ありのままを愛すること

個人的に、朝南先生が挿絵を担当された作品の中でも一番のお気に入りだったりします。
絵画や昔話になぞらえたストーリーと、朝南先生の幻想的なイラストのシンクロ具合が素晴らしい!!!作品の世界観を余すところなく伝え、かつその魅力を増幅させていると思います。


医師・嶺一郎と、ハーフの日本画家・閑(しずか)。
嶺一郎は、死別した恋人への想いから、幸せになることに罪悪感を感じている。
そんな嶺一郎をモデルに天女を描きたいという閑。外見の美しさだけでなく、どこか地に足の着いていない嶺一郎の生き方にも天女像を見たのかもしれません。

閑は、同じ芸術家でも昔の恋人とは大違いの、強引で型破りな男。
しかしその大らかな優しさに救われ、惹かれていく嶺一郎。
閑に抱かれながら、誰にも言えなかった過去の色んな想いを吐露するシーンが切なくも美しいです。そんな嶺一郎を(恋人に嫉妬しつつも)優しく包み込む閑は、限りなく優しい。

衣を失ってどこにも行けなくなった天女に、衣はあげられないけど人間界にも幸せはあるよ…と手を差しのべる人間。
「大切な人の死」という重いテーマを扱う作品ですが、昔話や絵画に見立てた演出がその重さを和らげ、残された人々の未来に優しい希望の光を与えていました。
そして、嶺一郎と閑のシーンの数々がまた、絵画的情緒にあふれてて美しい(*´▽`*)
芸術家な閑だけあって、嶺一郎に衣をまとわせてのHだったり、洋館の屋根裏での花見だったり、暖炉前だったり…二人を●RECしたい、というより絵画に納めたい!と思ってしまいましたw

もちろんキレイなだけの二人じゃなく、閑の嫉妬や、嶺一郎には理解できない閑の芸術観・仕事観など、色んな諍いはあり、人間らしさも見せます。
それでも、共有できない過去や、見解の相違も含めてありのままの相手を受け入れ、
愛そうとする結論に至る二人の姿勢がとても素敵でした。
愛しているから理解したい・受け止めたい…って言葉にすると優等生的だけど大切な姿勢だよねと実感。

かけがえのない相手に出会えた二人が、それぞれの過去や生い立ちと向き合い、地に足をつけて生きていけそうなラストがとても印象的でした。

また、朝南先生のイラストの効果もありますが、四季折々の情趣や、閑の描く日本画などの描写が優れていて、視覚的な想像力が掻き立てられます。
大きな波乱やドラマティックな展開は少ないけど、日常の風景やちょっとしたシーンがふと記憶によみがえり、度々読み返したくなるような、そんな魅力のある作品です。

7

天女の眠る庭

イギリスとハーフの日本画家×過去に恋人を亡くしたお医者さん。
うん、なかなか良かったと思いますv
昔死に別れてしまった恋人と雰囲気が似てることで、恋と未練をしてるんじゃ?的な!
日本画家の攻めの見た目と性格がめちゃくちゃ好みだった(*´Д`*)
名前「閑(シズカ)」だし!!女みたいな名前の男って好きだ。
ただ、二話じゃなくて一話にしてもっとじっくり書けばもっと良かったと思う~
もとは雑誌シャレードに載ってたのがなぜかリンクスで発行らしいー笑

3

死んだ恋人以上になろうってたいへんよねぇ・・

主人公嶺一郎(りょういちろう)には誰にも言えない恋人との逢瀬を続けていましたが、彼の突然の死によって、それは閉ざされてしまいます。
密やかな恋だったから、その死について誰にも辛い気持ちを打ち明けられず、また恋人が死んだのは自分の最後の言葉が原因でないかと深く傷ついてしまいました。
死んだ恋人との苦い思い出に苦しむ主人公、相手がすでにいないので、取り返しはつかないし、やり直すこともできない、後悔だけが、降り積もり澱のように沈殿し、誰に対してもひどく臆病になります。
それは、自分が幸せになることにすら感じる罪悪感。。。せつないです~
そんなある日、嶺一郎はふとした切っ掛けから陣ノ内閑(じんのうちしずか)の絵のモデルになることに。
傲慢なほどの己を貫き通す生き方、愛し方に、翻弄されますが、やがてそれも心地いいものに。
しかし、そういう心地よさも、心地いいと感じていることに気づくと、苦しみになってしまいます。
好きだったはずの彼と正反対な閑に惹かれているのは、昔の恋人を過去の物にして新しい恋に踏み出そうとしていることだと気づいたから、もう陣ノ内に会うことはできないと自分のなかで惜別を決心してしまいます。
新しい恋に足を踏み出すまでのお話が、前半「天女の衣の盗み方」そして、後半は死んだ恋人の身代わりではないかと陣ノ内がやきもきして、陣ノ内もやっぱり人の子だったかとホッとさせられる「天女の眠る庭」です。
しかし、人の子でも人騒がせは同じで、やっぱり嶺一郎を翻弄します。でも、一度はあらがっても二度目は言うことを聞いてやる嶺一郎も人が良いと思いますが。。笑
陣ノ内が日本画家なので、美しい景色、色合うの表現が幕間に散りばめてあって、風情のある作品でした。

6

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