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my policeman
同性愛がタブーだった時代。愛し合う男性たちと、その妻を描く美しくも哀しいラブストーリー。(帯より)
まさにその通りの心を揺さぶられるストーリー。読後放心状態でしばらく他の本に手をつけられなそうです。人間の美しい部分と醜い部分が描かれ、イギリスのブライトンという海辺の街の描写は美しい。
物語は1999年に1957年の時代を回想しているスタイルなので、その時代間を行ったり来たりします。しかし、同じ出版社の同レーベルの前2作と違い、イギリス物でも回りくどいジョークなどもなく読みやすかったです。表紙デザインもピンク→赤の次はブルー。憂いを帯びた金髪碧眼の男性のワンショットの絵も最近のBL風で素敵。
表紙の人が美しい警察官・トムで彼は男の恋人・パトリックがいるのに自分を好きな女性マリオンと結婚します。パトリックとの関係を隠したまま。いくら法律で同性愛が禁止されていた時代で独身でいることが仕事の上でもプレッシャーだったとはいえ、酷いことをしました。当然そのツケはじわじわと後から効いてきます。ドラマチックに。
マリオン視点とパトリック視点の交互で書かれていて、トム自身の視点は最後までわからないのですが、彼は自己中で臆病でずるくて心根は容姿のように美しい人ではなかったな、と思います。
とはいえ、パトリックとトムが出会い恋に落ちて付き合い始めるシーンの数々は美しく、BL好きにはたまらないものばかりです。直接的なセックスシーンはないので、受け攻めもはっきりしませんが、精神的には年上のゲイ・パトリックにリードされてトムが色々教えてもらう感じで、警察の制服のボタンに1つ1つ触られるだけで息が上がっていってしまう所は萌えました。
主役の1人に警察官が出てくるのも、女と男2人の三角関係で男同士の方が絆が強いというのも自分の好みどストライクの話でもう神しかありませんでした。色々な要素を含んだ小説なのに表現の仕方が素晴らしかったです。マリオンの友人の女性2人も存在感がありました。まさにLGBTQ文学だと思います。
既婚設定が許せて欧米のBL・M/M小説、モノクローム・ロマンス文庫などが好きな大人の方には超おすすめです。痛い所もたくさんあるけど美しい話だと思います。
超メジャーな元UKアイドルのあの人が主役のポリスマンを演じて映画化するのにもびっくり。プロモーションの映像何回もリピートしてしまいました。パトリック役の方も素敵。
本屋をふらふらしてたまたま見つけた本でしたが、クオリティが高く大当たりの本でした。こういうことがあるからリアル書店通いはやめられない。
追記…「美徳と悪徳を知る紳士のためのガイドブック 」という緑の表紙のLGBTQラブストーリーも3月に同じ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)から出てたので早速購入。面白ければまた情報登録依頼します。
昨年に「僕の巡査」として映画化された作品の原作です。
ある一人の英国人巡査トムを巡ってパトリック(男)とマリオン(女)で想い合う(?)共有する(?)三人の男女の青年時代から老年期までの一代記です。複雑な恋愛模様が描かれます。
シリアスになりがちなストーリーでしたが、ユーモアもあり、小説として良く出来ているので夢中になって読み進めました。読み終わった後に何とも言い難い心情になりました…。「僕の巡査」という言葉が哀しい響きに聞こえます。
それでも読んで良かったです。
この小説のスタイルとして現代と過去が交差して描かれるのは、少し分かりづらかったかな。。
ヒロインも個性的な人物なので、読みやすかったです。
他の方も書かれているように、トムを愛する二人の姿が鮮明で、ギリシア彫刻のような美青年トムはあまり印象に残りにくかったです。パトリックとマリオンの関係は「恋敵」という言葉を簡単に当てはめるのは似つかわしくないように思えました。
同性愛は凶悪犯罪と同じように罰せられていた時代の物語です。
どうしても愛の成就が望みにくい状況でも、着実に愛は育まれていきます。誰も止める事はできないです、、。
悲劇の後でも一途にトムを想うパトリック、長年冷え切った夫婦関係の中でトムの洗濯物を洗うという数少ない接触に夫の息吹を感じるマリオン。読んでいてそれぞれのトムへの想いが切なかったです。
三人三様に人生(現実)に打たれた姿が痛ましく、心苦しかったです。
ほつれた糸は縫い直すまでは戻らず、、。
同性婚も一つの選択肢になる時代には、こういった悲劇は避けられるようになるのでしょうか。自分の想う人生を歩めるようになるのでしょうか。多様性がもっと認められる時代になって欲しいです。
ラストエピソードは映画版では感動的なシーンに演出されているようですが、小説版はあっさりと終わっています。それでも「これから」に想いを馳せてしまいます。
翻訳で読める欧米のメンズラブ系はモノクローム・ロマンス文庫のみでしたが、最近二見文庫も力を入れられているので嬉しい限りです。値段は高めですが、欧米の空気感を存分に味わえるのでお気に入りです。
映画の方も見てみようと思います。
公の場でLGBTQに関する差別発言をすれば世界的に叩かれる現代。同性愛は死刑だ、凶悪犯罪だとされていた時代と比べると驚くべき時代の変化です。何事も日々一歩ずつより良くなる…と思えます。
”BL以外でなによんだ?”トピかと思いきや登録がありました。
自分に正直に生きることが難しかった時代の3人の男女のままならない心模様、しっとりしみじみ、物語を堪能したい方にお勧め、秋の夜長によいかもしれません!
”僕のおまわりさん”…ですね。にやま先生の世界観とは真逆の切なさ満載のLGBTQ小説でございました。切なさが強くて萌えどころじゃない…と思ったんですが、”制服萌え”あった!!ということで萌1となりました。
ブライトンの美しい情景を文章で読める楽しさがあり、ポリスマンの妻とその恋人の視点が交互にきて読み易いです。本人の視点はないけれど、二つの視点が”ポリスマン(トム)”のことばかり語っていました。ちなみに、”マイ・ポリスマン”とは、恋人のパトリックが日記でそう呼び掛けるのです(”心を半分~”の”M”みたい♪)。ゆえに、一番切ないのがタイトルかもしんないです。
ゲイばれしたら社会的に死ぬという時代、警察に務めるトムは、パトリックと愛し合いながらも、妹の親友で自分に好意をもっているマリオンを妻(という役割)に選ぶわけですが、トムがパトリックに対して
「(僕を彼女と)分け合える?」
と聞くシーンが、とても悲しくて美しくて印象的でした。そのことによって、全員が追い詰められていくのでしんどい。ヘタレで不誠実な男と言えなくもないけど、彼自身は社会や家族に対して誠実にありたいと思った顛末が…切ないです。
マリオン(教師)とパトリック(学芸員)が愛するトムですが、彼らの教養の高さと比べて、美しいだけの張りぼてのように見えてしまいました(彼視点がないせいかもしれません)。ただやはり、作中二人によって何度も語られるトムの”美”が圧倒的なのです。ヴィクトリア女王の離宮の謁見の間の美しさに心を奪われるマリオンの心情や、それを”きわめて無意味な美しさ”と讃えるパトリックの表現が、そのままトムへの称賛のようでした。
最終的に、私はマリオンという女性の残酷さを強く感じてしまいつらかったです。
彼女がとった行動によって、トムがパトリックを2度失うことになるのではないかなと。最期に知る事実が彼らを救済するようにも思えず…、他の方はラストをどう解釈するのかな~と気になりました。
というわけで、一通りの解釈だけでは足りない味わい深い作品ですね。