気難しい王子に捧げる寓話

kimuzukashii ouji ni sasageru guuwa

気難しい王子に捧げる寓話
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神179
  • 萌×227
  • 萌9
  • 中立3
  • しゅみじゃない5

--

レビュー数
31
得点
1033
評価数
223
平均
4.7 / 5
神率
80.3%
著者
小中大豆 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
電子発売日
価格
ISBN
9784199010576

あらすじ

「薔薇の聖痕」を持つ王子は、伝説の英雄王の生まれ変わり──。国中の期待を背負って甘やかされ、すっかり我儘で怠惰な暴君に育ったエセル。王宮内で孤立する彼の唯一の味方は、かつての小姓で、若き子爵のオズワルドだけ。宰相の地位を狙う野心家は、政務の傍ら日参しては甘い言葉を囁いてくれる。そんな睦言にしか耳を貸さないエセルの前に、ある日預言者のような謎めいた老人が現れて!?

表題作気難しい王子に捧げる寓話

オズワルド・メルシア,エセルの元小姓で今は子爵,27歳
エセル,ルスキニア王国の王太子,21歳

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数31

とにかくめちゃくちゃ面白ーーーい!!

甘やかされ、我が儘放題に育った愚かで傲慢な王子。
不思議な老人から「真実を写す鏡」を見せられます。
そこに写った恐ろしい未来とはー?

と言った、どこか童話を思わせるお話になります。

これね、大変美しく華やかな印象を受ける表紙ですが、内容としては結構シリアスだしハードなものなんですよ。
でも、めちゃくちゃ面白いんですよーーー!
や、400ページ超えとかなりのボリュームでありながら、あまりの面白さに一気読みしちゃって。
これ、ファンタジーとして傑作すぎる。
そして、主役二人のラブ部分が萌えすぎる!

もうさあ、山場ではブワッとこみ上げるものがありましたよ。
オチには鳥肌が立ちましたよ!
この作品、本当に凄い!!

ちなみにですね、あらすじや作者さんの作風等から、かなりダークなものを覚悟してたんですよね。
でもそんな予想は外れ、どちらかと言うと心踊らせてくれる痛快な冒険活劇の要素の方が強いんですよね。
シリアスだし重い部分はあるものの。
まぁそんな感じで、痛いのが苦手な方もぜひ読んでみて下さい。

内容です。
伝説の英雄王の生まれ変わりの証・薔薇の聖痕を持って生まれたエセル。
甘やかされ放題だった彼は、我が儘で癇癪持ちのどうしようもない王子に育ちます。
そんな彼が唯一心を許して愛を望むのが、かつての小姓で若き子爵であるオズワルド。
実はオズワルドですが、英雄王と共に国を救った偉人で伝説の宰相の生まれ変わりの証・刺草の聖痕を持つ者なんですね。
彼が運命の相手だと疑わず、睦言だけを耳に入れてやりたい放題、傍若無人にふるまう日々。
そんな中、エセルですが、突然現れた不思議な老人により悲惨な未来を見せられてー・・・と言うものになります。

えーと、こちらですね、繰り返しになるんですけど、とにかくストーリーがめちゃくちゃ面白いんですよ。
や、そもそもね、最初読んだ時、序盤の主人公があまりに酷くて、ドン引きしたんですよね。
こう、酒に溺れ、すぐ癇癪をおこし、周囲に当たり散らしてあまつさえ暴力を奮う・・・。
えっ?
これ、本当に小中先生が書いた受け?
てな具合に。

また、こちらも小中作品で一番と言っていいんじゃないかってくらいに攻めの性格が悪くてですね。
宰相の座を狙う野心バリバリのオズワルド。
彼は、エセルの本当は孤独な心につけ込み、彼の恋心を利用してのし上がろうとする。
こう、睦言を囁きながら、心の中ではコケにして見下げてって感じで。

エセルですけど、まぁ本当にダメ人間に思えるんですけど、そこは小中先生。
実はどこか憎めないんですよね。
侍女に癇癪を起こしていても、ただ引っ込みがつかなくなってるだけで本心では焦っていたり。
あと、そんな我が儘放題ではありながら、オズワルドへの思慕は一途で可愛いと言いますか。
こう、根っからの悪人とかでは無く、ただ単に何も教えられてない可哀想な子供なんだなぁと言う印象を受けるんですよね。

と、ここまでは、愚かな王子とそんな彼をいいように利用する周囲や攻めと言う、なんともほろ苦い展開。
が、ここからがこのお話の本当の面白さと言いますか、真骨頂と言いますか。

エセルですが、謎の老人によりこのままだと訪れる悲惨な未来ー。
自分は死に、国は崩壊し、宰相として最後まで国の為に尽くしたオズワルドと弟王子が殺される・・・。
それを知る。
そして、愚鈍でどうしようもないと思っていた。
そんな現在の自分が形成された、周囲の思惑を知る。

そこで、悲惨な未来を変えるべく、心を入れ換えて立ち上がる。

いや、主人公成長ものの側面もあると思うんですけど、ここからの彼の反撃だったり、腐敗した国の立て直し部分だったが、とにかく面白いんですよ。
こう、一人一人味方が増えてく様だったり、相手の裏をかこうと知略を巡らす様だったり。
もう、ワクワクさせてくれる。
またそんな中で、一途で思いやりがあって賢くてと言った、主人公の本来の姿が明らかになっていくのも胸がすくと言いますか。
どんどん魅力が増して行く主人公の姿に、惚れ惚れしちゃうと言いますか。

ちなみにこちら、しつこいですが、攻めの性格がめちゃくちゃ悪いです。
彼の内心と言うのはかなり複雑で、もう読んでると、愛と憎しみは紙一重なんだなぁと言う感想しか出てこない。
そう、彼の中で愛が勝ってるのか憎しみが勝ってるのか、今一分かりにくかったんですよね。
分かりにくかったんですけど、山場でようやくスッキリすると言うか。
こいつ、ただ単にめちゃくちゃひねくれてるだけじゃん!みたいな。
てか、実はかなりの執着系じゃね?と。
そして、アホだな!と。
もうね、こんな緊迫したシーンなのに、申し訳ないけど萌え転がっちゃいましたよ。
この後の「聖痕」のオチでは、グッときちゃいましたよ。
ああ、二人は真実、運命の相手だったんだなぁと。
胸にこみ上げるものがあると言うか。

と、そんな感じでとにかく素晴らしい作品でした。

ラストがですね、余韻の残るとても素敵なものなんですよね。
私はこういうラスト、ついついホロリときちゃうんですけど。
最後まで、本当に素晴らしかった。

31

徹夜して読んでしまった

読み始めた頃は、エセル王子があまりに嫌なやつすぎて感情移入ができず、これ最後まで読めるか?と怪訝な顔でページを捲りました。

ですが、起承転結の承の部分あたりから途端にストーリーが転がり出して、読む手が止まらなくなって、深夜0時から読み始めたものが現在朝の6時ですよ……。
この歳になって徹夜して本を読むなんて…。
寝る前にちょっと読んで寝ようかなって思ったら、とんだ大火傷みたいになっちゃいましたが、私は後悔していないです!!!!

今回はBLなんですけど、王太子による国家再建物語が主軸です。
BLじゃなくとも、楽しめる骨の太い内容でした。
ゼロどころかマイナスから始まる王太子国家再建計画は、徹夜して読んじゃうほど面白いです。
でも、BLとして、きちんと恋愛模様も押さえてて、王子の恋のお相手オズワルドともマイナススタートがどんどん引き付けられてくのがたまらない!!
最終的に面白いこと書いてて、最近流行りの溺愛とか執着とかそんなものを通り越して、「俺の心のすべての感情があなたに向けられている。愛憎、好悪、嫉妬、羨望、執着……すべてだ」ってすごくないですか?
読みながら、私の胸中では(心全部系BLじゃん。まさしく、愛じゃね?いやまてまて、愛じゃ片付けられんくね?クソデカ感情すぎん???)ってなりました。

小中大豆作品の中でも重厚めかもしれないです。小中先生ファンなら絶対買うことをおすすめします。
あ。あとあと、小中作品なので、刃傷沙汰はありますが、刃物出てきた時点でこれぞ!って感じして好きでした。やっぱ、小中作品は刃物でクライマックスを迎えてほしいですよ、私は。

堂々の1400ページで、ほんとねるねるね練るくらいには手が止まらないので、覚悟してページ開いてください。

26

最後に一度だけあるベッドシーンでの会話に爆萌!!

読む手が止まらず、最後まで一気読みしてしまいました。
電子なんで、本の厚みが実際わからないため購入して開いてから、うお!400P以上ある!と気づいた次第で。

なんというか、骨太な話でした。
単にBがLしてるだけのお話ではなかったです。


オズワルドの属性が「腹黒」とあったので、読む前はエセルを周囲から孤立させて囲い込む系なのかと思ってたんだけど、全然違うんですよ。
オズワルドは、エセルのことなんかこれっぽっちも好きではないの。
それどころか心の中では見下げてるし、立身出世するための踏み台でしかない。

ある日、エセルが不思議な老人から見せられたのは、過去の真実、そして今、それから訪れる悲惨な未来。
それによりオズワルドの本音を知ってしまい、愕然とするエセル。
そこからお話は大きく動き出すんだけど、オズワルドへの想いとかひとまず置いておいて……という感じになるんですよね。
だって、正直惚れた腫れたやってるような状況ではなく、やがて国が滅亡するか否かという崖っぷちだから。

そこからのエセルは、ただただ素晴らしい。
ブラボー。

なんか、エセルが置かれてきた状況が、改めて本当に不憫で。
幼い頃から食事は一人でポツンだったエセルの状況とか泣けてくるし、オズワルドが側にいてくれるようになったらそりゃ必死で追うよねと。
だって普通なら、無条件に抱っこ抱っこ抱っこぉぉぉ!!の時期だもの。

で、オズワルドの心中がこれまた複雑。
最初はひたすら憎しみでしかないような感じなんだけど、読んでいるとそれは憎しみなのか愛なのか判別できないというのかな。

最後に一度だけあるベッドシーンでの会話に唸らせられましたね。
萌えすぎて死にそうです。
まずそれまで一応ですます言葉だったオズワルドが自嘲のあまり「‥‥なあ、笑えよ」と言葉遣いが変わったところにキュキューン。(私だけ?)

そして最後の最後に「エセル。愛している。あなたが俺のすべてだ」というところが、本当に本当に本当に良くて。

というのも、ベットシーンだというのに「大嫌いだ」からスタートし、もっと甘い言葉をとエセルに泣かれて「愛してる」と言うものの「愛だなんて言葉だけでは言い表せない」と言い始め「俺の心のすべての感情があなたに向けられてる、愛憎、好悪、嫉妬、羨望、執着」などとごちゃごちゃ言うわけです。
でも、このごちゃごちゃ言ってる内容が凄まじくて萌える。

そういった複雑な感情や言葉全てが積み重ねられてきたうえで到達した「愛している」「あなたが俺のすべて」なんですよ。

「エセルに対する想いについて」をオズワルドに書かせたら多分凶器になりそうな分厚い本が完成すると思うし、そういった複雑な感情をオズワルドも持て余しぎみだったと思うんです。
そんな彼が、最後の最後に「愛している」というシンプルな言葉を使うに至った。
ここが、きたーーー!!!!!って絶叫したくなったし、「あなたが俺のすべて」というのも真実だなーと思えて。
これらの「愛している」と「あなたが俺のすべて」の重みが凄まじいとこが好き。

それに、それまでコイツ一筋縄じゃいかねーな!って感じだったオズワルドが初めて見せる「幸福そうな笑顔」ってやつにも、「最後まで……私のものにしていいのか」とオズオズしちゃうところにも、キュンとさせられちゃったわ。
くっそー!と思いながらも。

そして最後のしめくくりが凄く良かったですね。
他作家さんで申し訳ないのですが貫井ひつじさんの「狼殿下と身代わりの黒猫恋妻」の最後のたった一文なんですが、ここがとても好きで、こういう生涯を後世の語り手によって締めくくられているようなお話もっと読みたいなーと思っていたところだったので、嬉しかったです。


そしてマルジン……。

一瞬、もしかしたらエドワードと?と思ったけど、「エドワードの子孫たちが」とあったので、エドワードは妃を持ったんだなと。
で、電子の特典SSは、「ある家庭教師の決意」で、マルジン視点なんですね。
その最後に「生涯エセルに仕えた。エセルよりもオズワルドよりも長く生きて、代々の王太子の家庭教師を務め、やがて王となった彼らを〜」とあるんだけど、どんだけ長生きしたのマルジン……。
だってエセル達も早逝したわけではないんですよね。
そして「代々の王太子&王となった彼ら」ということは、エドワードの次の次くらいまでは面倒を見たってことでしょ?
そこにはマルジン本人や周囲もあずかり知らぬ何らかの呪術がかかってるのかしら??


24

攻め(オズワルド)が秀逸

最近、BL小説界ではファンタジーが大流行で、私としては若干食傷気味だったんですが、こちらはお話の運び方から何から大変面白かったです。
「就寝前にちょっとだけ」と読むのはお勧めしません。きっと止まらなくなって、次の日、大変な目にあいます。

私が特に面白いと思ったのはオズワルドのキャラクター。
貴公子然としているのにぜんぜん貴公子ではない。
いかにも悪人なのに全く悪人ではない。
おまけに、貴公子を装っている訳でもなく偽悪者という訳でもない。
でも本来、人ってこんなもんじゃなかろうかと思う訳です。周りの状況にあわせて変化していて、白黒はっきりしている訳じゃない。

そしてこのオズワルドが抱く『気持ち』もはっきりしないものなんですね。
自分に依存するエセルを軽蔑しているのにいざ離れられてしまうと焦り、どんなに自堕落生活をしても咎められないエセルを激しく憎みながらも同じくらいの強さで愛してしまう……この複雑さ、そして人間臭さにクラクラしちゃいました。

こんな風になっちゃったのは、エセル同様、オズワルドも親に愛されない子どもであったからだっていうのがね……エセルっていうのは『もう一人の自分』なんだろうな。だからこそ、お話の後半部でのエセルの『変身』と言ってもかまわないほどの立ち直りは、オズワルドを激しく感動させたと思うのですよ。

私、個人的にはこのお話を『攻めザマァ』だとは思わないんです。
意識していなかったから自分では気づいていなかったけれど、エセルが自分の運命を引き受け、なおかつ世界に立ち向かうことは、オズワルドの『叶わぬと思っていた夢』みたいなもんだったんじゃないのかなぁ。
ひどい目に合って反省するのとはちょっと違う。
彼はとんでもない喜びを手にしたんだと思うんですよね。

24

受けが好き

小中先生だし笠井先生だしマストバイ。たまらんかった。王たるものとはと泣きそうになるシリアスお話、本編440Pほど。仮想の中世ヨーロッパ、カタカナ名前が大丈夫で国の興亡話が好きな方はぜひぜひ。どっぷり浸れます。こういうの大好きなんで神にしました。電子、番外編付きだったら、絶対買おう。

ルスキニアの王太子エセルはいつも不機嫌。侍女たちに大概ひどいことをしていますが、建国王の生まれ変わりと言われる薔薇の形のあざを胸に持っているので、国民の心のよりどころとなっています。建国王に仕えた名相の生まれ変わりと言われる刺草の形のあざを持っているオズワルドも、エセルに良くしてくれていると思っていたのですが・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
マルジン・カレグ(受けの家庭教師)、アンナ(父王の側室)、エドワード(アンナの子)、オリバー(受けの専属騎士)、父王、フリーダ(父王の側室)、その他実権もつ貴族たち。マルジン、好き。(なんとカラー口絵にも登場しちゃうのだ!)

++好きだったところ

機嫌悪い超わがまま王子が、そうならされていた原因を取り除き、自分の周りの状況を冷静に把握したときの、絶望感。そこからの地道な這いあがり作戦。そこが良かった。

周りの策謀により無知な状態におかれた王太子。唯一心を許していたオズワルドの思いを知り孤立無援になったはずなのに、そこから「好きな人がひどい目にあう未来を回避しなくては」と頑張る。この王子、親からも十分愛されていなかったからか、自分のことを愛してくれる人、大好きな人のことをすごく大切に思うのです。昔侍女だったアンナ、兄と慕ってくれるエドワード、そして自分を蔑んでいるであろうオズワルドも。真実を知り、味方を少しずつ増やし、未来をなんとか変えていこうと足掻く姿がすごく胸にせまってきたんです。早めにマルジンが参入してくれたから孤独感が少し薄まったのも良かったでした。でないと苦しくてしんどすぎた。いやほんと善人。王たるべき素質が生まれながらにしてあるという方。

オズワルドは最初「感じ悪っっ」てところでしたが、だんだん複雑な彼の心境がわかってきて、マルジンときゃいきゃい言い合うところも良く、最後は本当に「あー良かった!」です。「一生かけて証明すれば」という彼のセリフが大好き。信じようって気になりますもん。

そうですね、攻めに惚れたというよりかは、受けの頑張りに涙し、敬服するお話でした。マルジンもいい味だしてましたし、エドワードは可愛いし、読み応えあるけどちょうどいい長さだし!国の興亡話は楽しい!(どうしても付け加えたい挿絵話!カラー口絵1枚目が超神です!金髪碧眼万歳!)

21

あーちゃん2016

165さま、こんばんは!コメントありがとうございます♡勝手にマルジンだと思ったのですが、違ったですかね…?と今更ドキドキしてます…
ま、イケメン万歳\(^o^)/ということでお許しくださいませ♡

165

あーちゃん2016様
はじめまして。165と申します。突然コメントして驚かせたらすみません。あーちゃん2016様のレビューを読んで、あ!口絵の二枚目はマルジンだったのか!と気が付きました。
うっかり素通りするところでした。書いてくれてありがとうございます!感謝の気持ちを伝えたくてコメントしました。

今年一番の神ファンタジーなるかも

まだ今年始まって2ヶ月しか経っていないが、自分の中で今年一番のファンタジー作品になる予感。

読み始めて、400頁以上ある鈍器本を一気読みした。
面白くて、本当に途中で読むことをやめられなかった。

まして、それが小中先生というのが、正直驚きだった。
先生の作品は、いつも可愛く、さくさく読めて、気持ちがほんわかするものが多い。
今回もそんな気持ちで読み始めたら、全然違った。
同一人物?と思ったぐらい、今までの作風と違い、このようなシリアスでサスペンス風で重めな切ない話を、読者を飽きさせない文章で描き切ったことに、先生の文才力と設定力のすごさに改めて感動したと共に、これほど素晴らしい作品を世に送り出してくださったことに感謝!

物語としては六青みつみ先生の『偽りの王子と黒鋼の騎士』と月夜先生の『雪原の月影』を1冊に凝縮させた作品だと思う。
良い意味で、この2作品の良いとこ取りで、上記2作品が好きな人は絶対に読むべき、そして満足度120%の作品だと思う。

素晴らしい作品。またもう絶対に手放したくない1冊が増えた。
そして小中先生の作品の中でも一番好きな作品になったかもしれない。

19

一気読み!

小中先生と笠井先生のタッグで期待は大きかったんですが、その期待を遥かに超えてました。面白くて一気読み!
エセルの第一印象が周りにチヤホヤされた我儘なガキ、だけどちゃんと罪悪感は持ってるし疑問にも思ってて可哀想でした。
彼が転換期を迎え、苦しみながらも自分の罪を受け入れて前に進むと応援したくなりました。謙虚で聡明、そんな彼だからあのどん底から周りの信頼を得られるようになったと思います。
味方を増やし、状況を好転させたシーンは爽快でした。転換期からずっと自責の念と不安を抱えていたエセルの重りも少しは軽くなったかなと。
オズワルドはエセルにコンプレックスと幼い頃の自分を重ねていたのかな。庇護し利用する筈だったエセルの成長に焦り、嫉妬し、愛を乞う姿は溜飲が下がりました。
そんなオズワルドが愛を乞うシーンが印象的、およそ愛を乞う言動ではないけどそれだけエセルに複雑で強い気持ちがあったんだなぁと。対するエセルが素直で可愛かったです。
屈折した2人愛も、国の再建物語としても重厚で面白かった。

19

ページを捲る手が止められない

作家買い。
小中さん×笠井さんという神タッグの作品で、発売前から楽しみに待っていました。
実際に手に取り、笠井さんの描かれた美麗表紙にうっとりし、そして今作品の厚さにびっくり!普通の小説の1.5倍ほどはあろうかという超大作。ページ数にして443ページ。

で。
この厚さをフルに生かした非常に濃厚なストーリーでした。さすが小中先生。
ページ数はあるのに一気に読んじゃう。最後の最後までハラハラドキドキしつつページを捲る手が止められませんでした。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






ルスキニア王国の王太子・エセルが主人公。
金髪に白い肌、見目麗しいビジュアルを持つ彼はさながら天使の様。側室を何人も持つ父(国王)ではあるが、エセルは正室の生んだ王子。しかも、母親も良家の出自ということで彼の立場は安泰なものだった。

が、彼の美貌も生母も関係なく、エセルは間違いなくルスキニア国の「王子」であった。それは彼の生まれつき持った身体に刻まれた痣によるものだった。

ルスキニア国には古い言い伝えがある。
国を建立した王がいた。その偉人の王には薔薇の花の痣があったのだと。そして王と共に国を興した側近には刺草の痣が。

エセルには胸元に薔薇の痣を持って生まれ、それ故にエセルは賢王の生まれ変わりだと言われ、彼が次期国王になることが子どもの時から決まったのだった。蝶よ花よと育てられたエセルは、その期待とは裏腹に我儘で怠惰な、そんな若き暴君と化していた。

そんなエセルにただ一人忠誠を誓ってくれているのは子爵のオズワルトだけだった。オズワルトは刺草の痣を持つもの。エセルはオズワルトと共にこの国を担っていくのだと信じ、彼だけを妄信的に信頼しているが―。

健気受けとか、薄幸受けはBL作品においてテッパンと言える存在ですが、今作品の受けさんはまさかの愚王(まだ王じゃないけど)です。我儘で気に入らないことがあるとすぐに癇癪をおこすというとんでもない王子サマです。生まれ持ったビジュアルも深酒や不摂生に伴い少しずつ損なわれていっている。

そんな愚かな受けさんを救い導くのは、もちろんスパダリの攻めさんよね?

という推測を見事に裏切り、オズワルトというイケメンな男はまさかの腹黒さん。自身の出世のためにエセルを掌で転がすという、こちらもまたBL作品においては異色の、びっくりする攻めさんなのです。

攻めさんも受けさんもこんな感じで、どういうストーリーになるのかなあ。
と思いつつ読み進めたのですが。

いやいや。
なんじゃこれー!

という、めちゃめちゃ面白いストーリー展開でした。
エセルはとあることをきっかけに自分の愚かさを認識しますが、これがちょっとファンタジーっていうのかな。不可思議な展開を見せますが、このファンタジーさをきっちり描いているのが笠井さん。摩訶不思議、でもそこはかとなく漂う耽美感だったり美しさだったり、儚さだったり。笠井さんの挿絵が加わることで小中さんの文章に一気に色がつく感じがしました。

エセルは大国の王子という高い身分の青年ではありますが、その環境ゆえに孤独で心が休まることがない。彼を貶めるために様々な手段が駆使され、それ故にエセルは追い詰められていく。

そこを救ってくれるのは不思議な出来事なわけですが、実際に自分で己の状況を把握し、あがきもがいて国のために何とかしようとしていく。そんなエセルがめっちゃ健気で可愛いの。

エセルには味方はいない、と彼自身は思っていましたが、曇った目を拭ってみれば、敵だけではない。エセルを信じ見守ってくれている人がいることによって、シリアスな設定のお話なのですが、希望がちらちらと見えているのでドシリアス過ぎないのも良かった。

一方の攻めのオズワルト。
彼もねえ、めっちゃ腹黒って言うんですかね。
エセルを馬鹿にし、自分の出世の道具としてしか見ていない。女性との関係も透けて見える攻めさんなので、序盤、彼に対して良い感情が持てなくってですね。が、オズワルトがエセルに偏見を持っているのにもきちんと理由があるので、読み進めていくうちに彼がナイスガイにしか見えなくなる。まさに小中マジックか。

序盤で書きましたが、今作品はかなりのページ数を持つ作品です。
が、この長さが全く苦にならない。この長さが存分に生きた、そんな奥行きのあるストーリー展開なのです。

ルスキニア王国に伝わる、賢王の徴である薔薇と刺草の痣の秘密。
エセルが己の間違いに気づくことになった不思議な出来事。
欲望渦巻く、相手を出し抜こうとする駆け引き。
そして、オズワルトとエセルの関係。
そういったことを軸に進むストーリー。終始惹きつけられる、そんな1冊でした。

エセルに手を貸す学者のマルジン。
彼がまたカッコよ!ていう好青年(笠井さんの描かれたマルジンの飄々としたビジュアルがこれまたクソほどカッコいい)。
オズワルトじゃなくてマルジンにしなよ、エセル。と何度思ったことか。

けれど、オズワルトにはエセルが、そしてエセルにはオズワルトしかいなかったんだねえ…。キラッキラの恋のお話ではありません。間違い、勘違いし、すれ違い、お互いに傷つきながらも手に入れたかった人は。

めっちゃ深い愛のお話に萌えが滾って仕方ありませんでした。

エセルに、「気づき」を与えたあの人は結局誰だったのかなあ…。個人的に、あの人かな?と思う人がいるのですが、これは読み手によって変わるのかもしれません。

小中作品はほぼほぼ読んでいますが、一番好きなお話かも。
文句なしの神作品。素晴らしい作品でした。

あ、あとマルジン。
彼にも素敵なお相手が見つかるといいなあ…。ということで、マルジンのお話をぜひとも描いてほしいと絶賛切望中です。

16

これは一気読みしてしまう

主人公(受け)のエセルが人生の再起を賭けた物語にBLエッセンスが含まれている感じですが、それが絶妙なバランスでまとまった素敵な一冊でした。
(恋愛重視の作品もいいけど、こういうしっかりとしたストーリーの本があるとBL小説を読んでて良かったなーと思えます。個人的に)

最近では転生して人生をやり直す作品がBLに限らず多いですが、こちらの作品は、きっかけは転生モノに近いけれど、しっかりと過去を反省して、いま現在生きている時代を必死に生き直そうとするところに好感が持てました。(何か一つでも大きな失敗をしてしまうとすぐに人生終わりのジャッジを下してしまう現代において、この作品はアンチテーゼにも感じられるのは深読みしすぎでしょうか)

どのキャラクターも素敵なのですが、特に攻めのオズワルドの心理がとても複雑かつ魅力的に描かれています。憎めないキャラなんですよ。
エセルとのすれ違いに終始切なくなりますが、終盤の告白シーンは圧巻で読了後の満足感がすごく高かったです。文句なしの神です。

16

真実を受け入れ強くなる

伝説の王の生まれ変わりの証といわれる薔薇の聖痕を持つダメ王太子・エセル。
そんなダメ王太子が、国と自分自身を起死回生させる物語。

起死回生するという主軸のお話がめちゃくちゃ面白かったですし、エセルとオズワルドの恋も、すれ違いながら進展するところも同時に描かれています。

正直、最初ダメ王太子エセルの狼藉っぷりに引き気味でした、、、。
え、この主人公を私は好きになれるの?
この感じで話がすすむのきついかも、、、。
と不安でした。
それが40ページを過ぎたあたりから、だんだんと話が進み面白くなってきて、結局最後まで一気読みしてしまい、エセルを大好きになっていました。

何故それまで狼藉者だったエセルが変わるのか。
それは謎の老人から銅鏡に映る、目を背けたくなる真実を見せられたから。

今まで信じてきたもの、見てきたものは正しい事ではなかった事に気付かされてエセルは、変わろうと立ち上がります。
そんな辛い真実や現実を見ても立ち上がろうとするエセル、とても強くて素直な人だと思います。
すごく応援したくなっちゃうんです!

エセルの想い人・オズワルドは、自分の復讐や出世のためにエセルを利用して内心馬鹿にしていました。
ところが、真実を知り変化したエセルに動揺し、エセルに対する感情が分からなくなってしまいます。

そして想いがすれ違うのですが、お話が進むにつれエセルに対する感情の変化がみられます。
長年拗らせてしまっためんどくさい感情に、中々気づけないオズワルドですが、エセルの参謀・マルジンの存在もあり、徐々に自覚していきます。
なんだかんだエセルのために頑張っちゃって仕事のできるオズワルドも素敵でした。

エセルとオズワルドの恋も萌えで良いんですが
個人的にマルジンが好きでした。
天才マルジンがだんだんと人間くさくなり、お茶目なところとかほんと可愛いかったです。


お話はファンタジーなんですが
貴族や王族の贅沢により国民が貧困になるとか、革命を危惧しているところ等、史実にあるような出来事なので、
現実離れしすぎたファンタジーにならずに、ストーリーに入り込めたな、と思います。

とにかく面白かったです。

14

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