恋をしていたころ

koi wo shiteita koro

恋をしていたころ
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神70
  • 萌×234
  • 萌16
  • 中立1
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
18
得点
535
評価数
125
平均
4.3 / 5
神率
56%
著者
安西リカ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
尾賀トモ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
電子発売日
価格
¥680(税抜)  
ISBN
9784403525292

あらすじ

建築事務所で働く一葉には、生涯でただ一人、同性の恋人がいた。その彼、仁科からある日七年ぶりに連絡があった。実は仁科は事故で軽度の記憶障害を患い、一葉のことも別れた理由も思い出せないのだと言う。仁科とは大学院で出会い、その情熱に巻き込まれるように恋に落ち、才能溢れる彼の隣にいるのが辛くなって別れた――。かつての記憶はないのに仁科の瞳に今も一葉への好意が見え、心が揺れる一葉だが……?

表題作恋をしていたころ

仁科智之、IW施行設計事務所の建築士
永森一葉、建築設計スタジオWの建築士

その他の収録作品

  • 帰る家
  • あとがき
  • 一緒に散歩を

レビュー投稿数18

若さゆえの未熟さ

安西先生作品の好きなところはたくさんあるのですが…
中でも特に好きなのが、作品によって職業や設定も様々なのだけれど、細やかな心理描写を交えながらごく普通の恋愛をする人々をとても丁寧に切り取っているところ。
登場人物たちの名前も、漢字と読みも含め普通に読むことができる親しみやすさがあって好きです。

記憶喪失の元彼と数年ぶりに再会したことをきっかけに始まる、2度目の恋のお話。
特定の相手のことだけ思い出せなくなってしまう設定自体はそこまで珍しくはないだけに、どんな味付けで読ませてくれるのかが楽しみでした。
読み終えてみれば、なんだかじわじわと温度が上がっていく作品だったなあと思います。
前半途中まではギアが上がらず、徐々に上がっていって後半でほっとするような読後感に包まれています。

言葉を選ばずに言うのなら、受けの一葉の自分本位な思考があまり好みではなかったんですね。
なので、受け視点で進む雑誌掲載部分を読んでいてフラストレーションがたまる面が多々ありでした。
一葉視点で語られる学生時代の彼らの恋愛は幸せの絶頂とも言えそうなはずなのに、どこか温度差を感じるというか…
お互いに好きだという感情はあっても、一葉の仁科への気持ちは恋ではなかったのかもしれないなあと思いながら2人の過去を追いかけました。
うーん、一葉の気持ちと若さが仁科の熱量に追いついていなかったのでしょうね。
記憶を失った仁科との再会後の方が良い恋をしていたんじゃないかな。
受けのこの未熟な部分に共感出来るかどうか。
好意的に受け取れるかどうかで評価が分かれる作品かなと。

後半では、与えてばかりだった仁科に同じくらいの愛を与えられるようになった一葉にひと安心。
ただ、残念ながら私は受けの複雑な劣等感は理解ができても魅力はそこまで分からず萌えきれなかったため、今回は3.5寄りのこちらの評価になりました。
一葉の成長よりも、ずっと一途だった仁科に肩入れをして読んでしまったのが大きかったです。
読めば読むほど奥行きが出てくる攻めで、どちらが好きかと考えるとやはり仁科の方が好きでしたね。

艶々の木の実のエピソードの活かし方が上手く、仁科にとっては木の実が宝物のようなものの象徴なのかもと考えると胸が詰まります。
今後は一葉と同じ家で一緒に暮らしながら幸せを積み重ねていってほしいな。
終始攻めの幸せを願ってやまない1冊でした。

0

最高の余韻に浸れる(+わんこが可愛いいいいい!!!)

犬が大好きなので、表紙のわんこに惹かれて購入。雑種わんこで、その名は”はちみつ”。可愛い…(⸝⸝⸝´꒳`⸝⸝⸝)
作品中にも何回も登場し、挿絵のはちみつもべらぼうに可愛いです◎
散歩しながら、はちみつのお尻を微笑ましく眺めるところとか…細かな描写の数々に「安西先生、犬飼いの気持ちを分かっていらっしゃる…」と感激してました。

…という犬目当ての購入動機で大変申し訳ない感じなのですが、安西リカ先生の現代もの、お話もやっぱり本当に素晴らしかった。。

攻めの記憶喪失が絡んだ、7年間の空白期間を経ての、再会ものです。

同じ”建築”の道を行きながらも、自分よりもずっとずっと実力があり、世界に認められている恋人に対する劣等感。
彼が自分の力で手に入れた賞金で買ったリングを贈られて、自分が心底惨めになる気持ち。
自分よりもなにもかも上だと認めざるを得ない男から愛され、甘やかされることの辛さ、悔しさ…

大学時代の一葉の苦しみに、自分がまるで一葉になってしまったかのように共感して読んでしまい、苦しさを覚えるほどでした。

なんの実績もなく、積み上げてきたものへの自負や自信が無かった頃だからこその、負の感情。

7年の間に、規模は違えど顧客から信頼され、実績を積み重ね、精神的に一回り大きくなった一葉。
規模の大きな仕事を手がけ、世界的に認められる仕事をしているけれど、実は精神的にとても脆いものを抱えている仁科(攻)。
読み進めるにしたがい、一葉がどんどんどっしり、大きく見え、二人が優劣ではなく真の意味で対等に愛し合える関係になったのだなあと感じました。

あとがき後の掌編もはちみつを巡る二人の微笑ましい攻防?で愛が溢れていて、犬好きとしてもBL小説好きとしても大大大満足の、浸れるSSでした✨

0

堅実さの中にときめきいっぱい

何回だって恋に落ちる…という展開は大好き!
再会記憶喪失復縁もの~と要素がモリモリなようで堅実的で穏やかな日常が軸になってるのが良かったです。

若気の至らなさを克服し、愛されるだけやなく伝えてこうって気持ちの変化や
実は寂しがりな相手を男前にどんと支えるようになったのもグッときました。

いつもはひたすらに優先甘やかしてくるのに(といってもクールに)ベッドの上では意地悪ってのも~好きです!!
そして、その要求を無下にはできない!!!

真意を知って見えてくるもの、そこからの身の振り方もグッときて、最後に帰る場所を作るのも2人ならではで…じんわりきました。

0

こういう話をもっと読みたい

安西先生〜…最高ですぅぅ。
この何でもないような日常の空気感に浸るBLが何より大好きなもんで……たくさん楽しませてもらいました。

BL小説界にはファンタジー作品が溢れきっていて、もちろん私もファンタジーは好きでよく読みますけど、現代ものにしか感じられないすぐそこにある親近感がすんごい好き。読者と同じ世界線に存在していると思わせるストーリーの進み方や時間軸をベースに、作品の中から溢れ出るキュン感やドキドキ感に浸る時間がこの上なく幸せ。かゆいところに手が届く萌えポイントの数々に、私はすっかり酔いしれました。

安西先生のあとがきにて、ご自身の作品は地味だ地味だと言われる…と言及していましたが、何をおっしゃいますやらって感じです。

全然地味ではない!!!
…と語気を強めて私は言いたい。

読んでいく側からドキドキワクワクしたり、胸がキュッと熱くなったり、切なくなったり幸せに包まれたり。一冊にこんなにたくさんの感情の色を詰め込んだ作品のどこが地味だと言うのか!(強調)
派手さのないストーリーだからこそ、ごまかしが効かないと思うんですよね。設定に頼らない胸アツな恋愛展開が本当に読み応えがあって素晴らしかった…。


かつての恋人が記憶障害を患い、自分のことだけを忘れているっていう状況なのに、潜在的に好きの気持ちが残っていて愛する人を追い求めている姿が、健気で切なくて心臓がもげそうでした。
別れた2人だけど、どこかでお互いの姿かたちや記憶を残していて、まだ昔の恋人を好きなままでいることの苦しさがこれでもかって描写されています。
別れたのは不本意なことだった…。ボタンの掛け違いが起こり、良くない形で恋人関係が終わってしまった2人が、またやり直しの時間を取り戻していく過程がすごく沁みました。

若さゆえ、見えていなかったところもありました。好きすぎるが故に手放した恋心もありました。

この作品は、やり直しのお話です。
仁科が記憶をなくさなければ、一葉は自分の気持ちに正直にもなれず、仁科の隠された想いにも気付かず、一生誤解したまま過去の恋に蓋をして過ごしていたことでしょう。仁科もまた然り。記憶を取り戻す作業が、結果昔の恋を再確認することに繋がりました。

仁科も一葉も同じ人に2度恋をしたんですね。

2人の気持ちがまだ失われていなくて、時間の経過をもってしても好きなままでいることの、一途で真っ直ぐな強い気持ちに萌え転がりました。
想いが通じあったときのシーンは最高!もうめちゃくちゃ良かった…。


一葉の気持ちの変化の描きがすごく良かったです。別れたとき、仁科のせいにしていたのが何だかなぁ…って感じでモヤモヤしましたが、自分の気持ちを修正し仁科に寄り添うようになったところは拍手でした。書き下ろしのストーリーで、仁科のいとこに強く言ったところがすんげーカッコよかった!

将来のことも前向きで、なんかもう全部がいい関係の2人にニンマリ&グフフですわ。


こういう素敵なお話が地味と評価されちゃうのは悲しいな…萌えの宝庫なのに!
日常のBLの中にも感情を掻き立てられる要素はたくさんあります。現代もの作品がもっと増えて欲しいなと思います。

2

最高です!

この作家さんが大好きで、
電子になっているものはほぼ購入してます!

なかでも、こちらの作品は1番好きかなと。
ネタバレになるので詳細は書けませんが、
かっこいいスパダリ系攻めと、
美形だけど、自己肯定感低めの受けが登場して、
ワチャワチャします。

スパダリ系の攻めが、
受けにベタ惚れしちゃう
おなじみの構図なんですが、
いやー、何度も読んでもいいんですよ。

すごく大きな事件があるわけではないのですが、
心の変化が、さらさらと描かれていて、
知らぬ間に引き込まれて読んでしまいます。

私は、もともと派手なストーリーが好きなのですが、この作家さんだけは例外で、
登場人物の心や関係性が
徐々に変化していき、

心の距離が近づいていく様がとっても素敵で
ほわっとするんですよー。

ため息が出るほど良くて
何度も読み返しちゃいます。
大好きな一冊です!

0

お互いしかいない!再会もの

記憶をなくしたのに昔をなぞる元カレと、今でも忘れられない自分との狭間で揺れ動く一葉。
しかも隣に引っ越してきてしまった元カレ、仁科。

はちみつ、という雑種のワンちゃんが良い仲介役になってます。

記憶を無くしてるがために、何故別れることになったのか、そして一葉のことだけ思い出せないのか、仁科は悩みつつも、現在の一葉に惹かれてしまいます。
一葉の方は、仁科が別れの際に引き止めなかったことをトラウマに感じており、そんなに好きじゃなかったからだと誤解したまま。でもこちらも現在の仁科に惹かれていってしまう。

あーーっ、焦れったい。
こういうストーリーは安西リカさんのお手のものですね。仁科が思い出せなかったのは、大事な人はみんな自分を置いて去ってしまう、一葉もそうやって去っていった、だから縋って追いかけられなかった事がわかり、一葉も学生時代の若いプライドで仁科から離れたことが伝わって、お互いに必要な相手だったことが分かってめでたしめでたし。
いやぁ、萌える。地味な感じで波風立たないけど、じわっと萌えがきます。そんな落ち着いた関係にちょっかいを出した従兄弟をビシッとやらかす?一葉ですが、唐突とはいえ、きっと仁科はめちゃくちゃ嬉しかったんじゃないかなぁって思いました。

昔、名前を呼ぶ人は去っていくからと名前呼びを嫌がった仁科も、最後は一葉から智之と呼ばれ、呼ぶことを望んだ、ってのもいいエピソードでした。

0

若かったあのころ

あの頃は若かったんだね。大人になった今ならわかる。そんなお話かな?

「恋をしていたころ」
あらすじのお話です。
自分から別れたのに、一葉がすっかり傷ついて被害者っぽく考えてるのがひっかかり。
仁科には一葉がすべてだったのに、一葉は与えてもらってばかりで返すこともあまりなく、勝手に比べて卑屈になって…。

再会してもやっぱり仁科は一葉を好きになって。あの頃言った通りですね。

隣人として淡々と過ごしながらも、やっぱり好き、でももう…と。
一葉の葛藤もわかるけどなあ、なんかなあ。
全然仁科のことを知ろうとしてなかったね、あの頃。
はちみつは鎹ですね。

「帰る家」
仁科視点です。また恋人になって一年半、休暇を仁科の家の別荘で過ごそうとなって。
この頃の一葉はまるで別人ですね。もともとはこんな感じだったのかな?そして今は仁科に惜しまず好きと伝えて。

別荘で仁科の従兄弟、優に怒ってくれた一葉。こうやって仁科は気が付かない間に傷ついてきたんだなあ。

こちらの仁科もまるで別人ですね。とにかく最優先は一葉で。いつまでもドキドキして。
一葉が小悪魔で男前です。

院時代は仁科が与えるばかりで、再会してみればあの頃のことが冷静にわかってきたり。
君らエッチばっかりしとったんかい?と突っ込みたくもあり。

最後は仁科が一葉以外何も要らないくらい満たされてるような、腑抜けなような。
良いお話でした。

1

MVPはわんちゃん


建築家の卵が出会い恋をして別れてキャリアを積んで再会する。


他の方のレビューで私が思ったことを100パー書いてくださっているので改めて書くことはないのですが、一言で言うと出会うのが早かった。


相手は好きだけど劣等感でいっぱいになり別れを告げてしまった受けも、初めてに恋人に愛することに夢中になりすぎて拒絶されることが怖くて追いかけられなかった攻めも2人とも若かった。

大学院の研究室で出会った一葉(受け)と仁科(攻め)。
仁科の一目惚れから始まり、仁科の熱い奔流に流され溺れるような付き合いをしていた一葉がふと我に帰った瞬間、仁科の才能に嫉妬してしまった時、それを飲み込めるほど人生経験を積んでなかった。

もともと女性としか付き合ったことのない一葉が男と付き合い受ける側になることを仁科がもう少し理解していたら、自分の話をもう少ししていたら、色々原因はあったと思うけど、
そして、それら飲み込むには2人とも若かった。
仁科にはキツかったかもしれないけど、一葉には一旦仁科と離れて自分を確立する時間が必要だったのだろう。


記憶喪失にならなければ再び連絡を取ろうなどと思わなかっただろうし、一葉の愛犬のはちみつがあんなに懐かなければもう少し違っただろう。
別れている時間は2人にとって必要な時間だった。


後半は仁科の従兄弟登場によって仁科の幼少期からの両親含む親戚からの無関心というネグレクト(生活面は面倒見てもらっていたのがせめてもの救い)のせいで人格形成に歪みが生じたのがよくわかりました。
一葉がちゃんとわかってあげられて良かった。一葉は仁科のことわかってる。

友好的な仮面をつけて、一見わかりにくい悪意をぶつけてくる従兄弟にはすごくムカついたけど、ちゃんと怒った一葉は偉い。
スルースキルを磨いた仁科は完全にスルーしているから余計にやめられないのかもしれなかったけど、傷ついてないわけないと相手に言い切る一葉。
謝らないといってたけど結局謝ってしまった一葉の人の良さが窺えるけど、従兄弟くんはもっとちゃんと反省して謝って欲しかったな。反省はしたんだろうなとは思うけど。

前半は一葉が足掻いていたせいでなかなかくっつかない2人でしたが、後半は2人がお互いを理解し存分にイチャイチャしていたのがとても良かったです。

1

神評価です

後で書こうと思って書評を書き忘れていたみたい。
再読して、評価を神にしようと開いたら、時効切れ?・・気づくのが遅かった。

7年前に仁科と別れて郷里に戻った一葉。
一葉をいちはと呼ぶ唯一の人から、7年ぶりにメールを受けて再会。
「雪の上に転がる木の実に一目ぼれ」と言っていたのに仁科は、一葉はを覚えていなかった。
事故の後遺症で一部の記憶を失ったという。

好みのタイプのいちはについて、何故一切の記録がないのか、
記憶を失った仁科に問われて、思い出しながら答える一葉は凄く辛かったと思う。

別れを切り出したのは一葉から、理由は、彼に感じる劣等感。
 「愛されれば愛されるほど みじめになる」
二人は同じ業に席を置く者同士、同じ世界で才能を競い合う者しかわからない才能の差。
高村光太郎と智恵子の関係と似て、一葉は壊れてしまいそうになる。

天才が無意識に振るう見えない才能の剣に当てられてしまった一葉の選択は、別離。
仁科の家に赴き、鍵を返すとアッサリ受け入れ、一葉の期待は外れる。
一葉が期待する友人関係にもなれない。
仁科が求めるのは「恋人のいち」だから。
 ・・一葉は、仁科を芯から理解していなかったことが分かる場面。

記憶を失った仁科と一葉が再会、近くに転居してきた仁科と、恋のやり直しはできるのか・・・?。
一葉が返し忘れたお揃いの指輪の存在が大きい。
一葉の揺れる気持ちが読んでいて辛くなる展開。
心理描写が素敵で、一葉の苦しみと、一葉の苦しみを理解しても解消できなかった仁科の苦しみが、なんとも言いようなく悲しい。仁科は、生い立ちが理由のトラウマを持つことを知る一葉。

どこかにこんな二人が居そう。身近なようで、遠いファンタジー。
心が震えた。

じっくり場面が進む展開、心理描写を楽しめる人向けで、情交シーンは少な目です。

2

盛り上がらなかった……

ぴれーねさんも書いていらっしゃいますが、私も「何度でもリフレイン」が大、大、大〜好きでして、それと同じ香りのするこちらの作品の電子化を、前のめり気味で待ってました。

「恋をしていたころ」というタイトルだけでなんか泣きたくなっちゃうというか、もうこれは神でしかないでしょ!!と鼻息荒く読み始めたのだけど、心が大きく揺り動かされることなく終わってしまった……。

どーしたの、自分。
なんでさ、自分……って感じ。
本当に自分にがっかり。

何でかなぁと考えたのだけど、記憶喪失ものの切なさを期待してたけど、切なさが足りないというか、そもそも受けに感情移入できなかった……。

かつてあんなに愛し合ったのに、今や赤の他人同然で攻めの気持ちはわからないけど、やっぱり攻めのことが忘れられない……という記憶喪失再会ものなら大好物なんですが、攻めの気持ちがこっちむいてるの分かっていて、再び恋をするのもあくまで受けの気持ち次第というところが切なさ半減というか。

受けが別れを告げた理由は、すごくわかるし、まさに男同士だなぁという感じで、ここは好きなんです。

なんだけど受けは、別れを告げた時にすんなりと承諾し、一切の未練を見せなかった攻めの態度が心のしこりというか傷になっているので、再び恋をする事が怖い。
自分から別れを告げておきながら、「あんなに簡単に切り捨てられるとは思ってなかった」とか逆ギレめいた被害者感情を抱いている受けの姿に、こいつは今も昔も自分のお気持ちばっかりだなーと。
そして今も昔も、ただただ攻めが不憫すぎるわと。

まぁそんな受けの成長物語として読めばいい感じだったけど、そこに萌えは感じられませんでした……。

あと、元恋人同士の再会ものという点でも、なんか物足りないというか。
攻めは、付き合ってた当時から男として完成してるんですね。
それが悪いというわけではないのだけど、同じ元恋人同士の再会ものである「何度でもリフレイン」は、かつて恋愛初心者同士が試行錯誤しながら付き合った初々しい恋人同士の再会もので、当時の攻めは無邪気な甘えん坊だったのに、再会したらすっかり落ち着いたいい男になっているんですね。
そこが年月の流れを感じるとともに、過ぎ去った昔のキラキラ感尊い…みたいなところが特別な感傷をもたらして泣けるし好きなんです。

それに比べると、この攻めは初エッチ時からセックスが熟練してて、院生でありながら数多くの賞を受賞&建築家としてのデビューをしてる凄い男です。
だから七年後に再会してもますますご活躍で……とは思うものの、あぁ…変わったな…あの頃とは違うんだな…みたいな感慨がないので、琴線に触れなかった。



でも攻めの「艶々な木の実」はジンときた。こういうとこ、好き。

6

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