シナプスの柩(上)

synapse no hitsugi

シナプスの柩(上)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神22
  • 萌×22
  • 萌5
  • 中立3
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
9
得点
136
評価数
32
平均
4.3 / 5
神率
68.8%
著者
華藤えれな 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
佐々木久美子 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
シリーズ
シナプスの柩
発売日
価格
¥855(税抜)  
ISBN
9784344808386

あらすじ

両親を亡くし、大学三回生の時に天涯孤独となった桐島水斗は、日本心臓外科界の権威である長山の援助を受けて医師となった。だが、援助の代償に長山の下で働くことと躰を求め続けられていた。長山から逃れたいとの思いが募る日々の中、NYから敏腕外科医の樋口が赴任してくる。彼の天才的な医療技術に心酔した水斗は、技術を教えてもらうことになり、いつしか樋口に惹かれていくが―。(カバーより転記)

表題作シナプスの柩(上)

樋口洋一郎,NYから帰国した敏腕心臓外科医
桐島水斗,研究寄りの心臓外科医

その他の収録作品

  • 水棲類の夢

レビュー投稿数9

幻想的で美しい

恩師、長山との8年にもわたる爛れた関係に疲れ果てた桐嶋水斗はそこから逃れるべくニューヨークの病院への就職を目指します。そんな中、水斗はニューヨークから赴任してきた敏腕医師、樋口洋一郎の助力を仰ぐことに。水斗は樋口と接するうちに彼に惹かれていき、関係をもつようになるのですが、結局ニューヨーク行きも、樋口との関係も長山によって壊され、絶望し自殺を図ります。自殺を図るまでの水斗のモノローグは涙なくして読めません。自らを汚れた存在として無に帰そうとする水斗はあまりにも痛々しいです。

一命を取り留めたものの、記憶を失い、幼児返りした水斗を樋口は一から育てようと決意し、二人で北海道へ移り住みます。北国の湖が水斗の心の様態を表すものとして象徴的に用いられ、幻想的で情感たっぷり。

こうした筆致は、華藤先生の作品の醍醐味ですね。とにかく言語センスや象徴表現が独特で美しい。

たとえば、水斗視点の樋口の指の描写。樋口の指は彼自身を象徴するかのように、その描写が頻繁に出てきます。水斗は樋口の指が汚れた自分を「清浄」にしてくれると信じ、自分の樋口への思いを、「死んだらこの指で解剖して下さい」という言葉で告白するのです。ちょっと倒錯した表現がエロティックでいいです!

が、本作での一番の萌のポイントは、幼児返りした水斗と子育てよろしく世話をする樋口のやり取りでございました。水斗がもう滅茶苦茶可愛いんですよ!子供だから、「なぜ?」を連発するわ、会う人を皆、動物に喩えるわ。そんな風に無邪気なのに、外見は艶っぽく、無自覚に色香を振りまく水斗に、クールで尊大(に見える)樋口先生が、完全に振り回されます。「俺を獣にしないでくれ」という樋口の心の声に萌え。

全てを忘れたように見える水斗ですが、夢の中で、記憶を失う前の自分とそれを自分だと認識することなく対話しているんです(水斗は過去の自分を「あの人」と呼びます)。今の水斗を通して、過去の水斗の気持ちを聞く樋口は、次第に水斗の夢の世界に囚われ、現実から乖離していき…。現実と夢が交錯するような不思議な世界観にこちらも引き込まれてしまいます。

脇はかなりキャラ立ってます。樋口の友人、海堂。樋口の良き理解者で、二人を見守る役。飄々とした性格で、彼がいると場が和みます。そして、もはや脇と言えるのか疑わしい悪役、長山教授。諸悪の根源です。彼がいないと話が始まらないし、進まない。キーパーソンです。これ以上ないほど二人の仲を引っかきまわしてくれます。水斗が長山に抱かれるシーンがしっかり描かれているので(しかも結構悲惨)、受が攻以外と関係するのは見たくない、という方は要注意です。

この上巻は、すご~く気になるところで終わるので、個人的には、上下巻揃えて読んだ方がいいかも、と思いました。

10

「シナプス(ニューロンの接合部分)」の棺=記憶の遮断

BL版白い巨塔? 
あとがきに書かれていましたが、著者が専門家の情報を得ながら書きあげた作品だけあって、いい加減ではなく真面目に細かく書かれていてとても面白かった。
でも、テーマを欲張りすぎたのか、少し物足りない。悪徳院長をもっと追い込んでやって欲しい。

特に、主人公の水斗が記憶喪失になって、記憶を取り戻すまでのプロセスが、専門家の情報を元にしてしっかり書かれているなーと、興味深々でのめり込むように読みました。

記憶を失った水斗に、魅力に負けた樋口が体を触れ合わせると、
水斗は、自分の体が情欲に反応したことに嫌悪を酷く示します。
自分は汚れている、と部屋を飛び出した水斗が、湖に入って行く。
すると、水面に映った自分の顔を指して、
夢の中でこの人と会って話をしている、
夢の中の人は、湖の底にいる、
その人のことを洋ちゃんに教えてあげるね・・と樋口に言う水斗。

最初この部分を讀んだ時、水死した水斗の父親(下巻で他殺と分かる)のことを言っているのかと思いました。
でも、それだけじゃなかった。

追い込まれて、長野から逃げる為に投身自殺をはかった水斗の脳のダメージは、蜘蛛膜下出血。
記憶を失って数か月後、幼児に退行した水斗は、頭部の損傷はほぼ完治しているのに記憶が戻らない。
精神的な何かが過去を思い出したくないと拒否しているのでは?という診断だった。

・・・そうか!だから「シナプス(ニューロンと他のニューロンとの接合部分)」の棺、というタイトルなのか!とこの場面で理解しました。本人の無意識が、記憶を繫ぐ接合部分を遮断している=棺に入れて、記憶を閉じ込めている。という意味。

深層心理の中の本当の自分を見つけて会話して治療する方法の一つに、ジークムント・フロイトの創始した精神分析学、夢を利用するユングの「夢分析」が有名です。それが、この作品の中で、さり気無く盛り込まれているので、面白かった。

ユングの分析を参考にして読むと、水斗の
「あなたに解剖されたい」/骸骨の標本に抱き着く/湖に沈む「あの人」 
と、水斗が言葉にした事象の意味あいが深くなります。
過去の自分の、死と浄化。
水斗は、本人の自覚なく無意識のうちに「死と再生」のメッセージを樋口に出していたんですね。

下巻を読むので、上巻の感想は、これでオシマイ。
神。

---
夢分析:
分析心理学(あるいはユング派)においては、夢は無意識、特に集合的無意識あるいは元型から意識に向けてのメッセージである。 そして、そのメッセージをセラピストが抱え、必要に応じてクライエントと共有するなどして、メッセージをクライエントが受け取れるように行われる一連の作業のことを夢分析と呼ぶ。
▶フロイトとユングの違い。
★フロイトは、夢に表れるものはことごとく「性的なもの」に関連づけた
★ユングの場合は、単に性的なものに帰するのではなく、その夢をより多角的な角度から分析するよう試みた。ユングが行った夢分析は、「拡充法」とも呼ばれている。

5

なんも言えねぇ。。。

なんというか。。。

 水斗(受)の不器用というか切ない嘘が胸に刺さった感じ
 それを徐々に分かっていく樋口(攻)とても細かい所に
 気を配った作品で。。。

一番のポイントは。。。
 
 樋口(攻)に水斗(受)が長山教授との行為をみられて。。。
  自殺をはかろうとしたって所が切なくて(涙)

あと!!!
 キーワードとなる「あなたの指に解剖されたい」ってのが
       もうなんというか普通じゃない感じで!!!

もうまとめて言うと情景などからもとても吸い込まれそうな作品です。
 

4

記憶喪失&幼児退行ものです

医者×医者。
クールな受けが記憶喪失して幼児退行してしまうのですが、そのギャップが良すぎました。 見た目は大人なのに、幼児言葉を使う姿にキュン!純粋で甘えたで可愛くて萌えます。 攻めもそんな受けにメロメロ、そんな2人だけの世界にキュンキュンしました。
かなり昔の作品で、設定は重ためなのですが読みやすい文章ですごく面白かったです。上下巻で長いけど普段小説を読まない人にもとっつきやすい作品なのではないかと思います。
ただ挿絵がちょっと古臭く感じて、個人的にはイメージと違ったのでそこだけ残念でした。

2

期待大だっただけに・・・。

ここで評価が高かったので読み進めることにしました。
が、あまりに私の期待が大きすぎたのでしょうか、イマイチ乗り切れませんでした。

何度もレヴューを書きたいなと思っていても、この肩透かしを喰らった感じで気持ちが整理しきれずズルズルときていました。

良かったところは、受けの水斗が長山に抱かれている現場を攻めの樋口に見られてしまうところ。
そこで彼の放った一言がいいんですよね。
自虐的というか、破滅思考というか。
ここまで言えれば男前だと思います。
その後、窓から身を投げるのです。
悲壮、悲惨、切ないのオンパレードです。

あと、水斗が普段から長山と関係を持たなければいけない場面で、その行為から逃げるために長山の飲むお茶に薬を盛り、そうなる前に眠らせてしまうところも良かったです。
眠った後でやれやれとため息なんか吐いたりして。
受けがこういったずる賢さを持っているところなんかも好きです。

でも相当な高さから落ちたにもかかわらず、水斗は重大な後遺症を抱えるような怪我をしてないんですね。
記憶障害や、精神が子供に帰ってしまうことはありますが。
もっと大変だろうと思うのですが。
あと、子供帰りした水斗もあまり信憑性がないというか。
それは華藤さんの話の描き方がクールに感じたせいかもしれないのですが。

兎にも角にも、切ない話が読みたーい!と探して、期待に期待を重ね読んでしまったため、残念な結果になってしまいましたが、お話自体は良かったと思います。

3

No mercy 無慈悲すぎるドラマ

これ、私には「悲報」ですよ。
時々、粗筋も何も見ず小説をドバッと買う時があります。本作も「メディカルサスペンス」とチラ見して購入してあったもの。
ただ…吟味してたら多分買わなかったかも。なぜなら「記憶喪失」ものなんだもの。
私、記憶喪失ものってイマイチなんですよね。
とにかくコレが絡むと物語に逃げを感じるし、ドラマチック過剰だし。
本作も途中で気付いてあらら…だったけど、何かご縁があったのだ、と思い直して読み続け。
だがしかし。
読むのがツライよ!主人公の水斗(みなと)がもう可哀想すぎて…見るに堪えないよ…

桐嶋水斗は若き心臓外科医。大学病院の勤務医。
しかし、教授の長山に肉体も研究成果も何もかも搾取されている。
そこに輝かしいNY帰りの気鋭の心臓外科医・樋口と出会うが、長山との爛れた関係を見られ、誤解され、絶望した水斗は自殺未遂をする…
…ここで一命を取り留めた水斗は、体は特に傷は無かったが頭部を強打して重度の記憶喪失になるわけです。
よくある攻めとの関係だけ忘れる、なんていうのではなく、基本的な生活習慣などもほぼ抜け落ち、まるで幼な子のようになってしまった水斗…

んも〜!
コッテコテじゃん。
ドラマチック過剰そのものじゃん。
これでもか!っていう不幸の波状攻撃。
美しい受けが不幸になる展開、昔は好きだったけど今はやーよ。ツライよ。
上巻のラストは、記憶を失っている水斗にまたもや接触を図ってホテルに呼び出してくる長山一派。
過去を知りたい、と応じてしまう水斗。
もう〜!この先読むのこわい‼︎というところで上巻終わるの。あ〜〜‼︎って感じ。

「水棲類の夢」
樋口が水斗を水族館に連れて行ってあげるエピソード。
コレね。
皆さんには何の関係もない部分で、私の個人的実体験とリンクする箇所があって読むのがキツいの。一緒にいて恥ずかしくなってくる、という部分ね。その時自分が感じたいたたまれなさとそんな風に思ってしまった罪悪感を思い出す…
私にとっては心をかきむしられるような短編ですが、一般的には無垢で子供のような水斗の微笑ましくも可愛らしい、そしてやがて切ない…そんな一編と言えるでしょうね。

1

ちょっと懐かしいサスペンスドラマ風

ちょっと懐かしいサスペンスドラマ風というか、韓国ドラマ的というか。リアリティ追求型ではないドラマティックなストーリー。

「あなたの指に解剖されたい」といった、触覚に訴えるような耽美なイメージの使い方はとても上手いと思います。言葉の使い方も全体的に詩的で美しいです。そういった雰囲気を楽しめる向きにには面白い本ですが、ふわふわと掴みどころのない感じもありますので、もっと現実感のあるストーリーを楽しみたいタイプの方にはあまり向いていないかもしれません。

いろんなことも起こるのですが、「こういう事件があって、こういう展開になって…」というストーリーそのものより、全体としての幻想的な雰囲気を楽しむ作品だと思います。

0

ジェットコースターロマンス?

あれよあれよという間に話が進んでしまって、残念ながら乗り切れなかった。
設定や展開は好みだったのに。

2

展開にヒネリが欲しい…

心臓外科手術の様々についての細かい描写なども手抜かりなく、作者の本作に対する取り組みの真剣さが窺えました。

<作品の雰囲気>
お耽美、のひとこと。
全編通して、桐嶋の「あなたの指に解剖されたい」という台詞が出てきますが、この小説はフェティシズムとか、死のバイオリズムに対して美を見出す傾向があって、そのあたりはホネフェチで筋肉フェチな私的にはツボでした。この人の手で解剖されたいっていうのは究極の殺し文句ですよね。
桐嶋の意識のなかには身近なものとして常に「死」があって、この危うさが作品に色気を添えています。

<ストーリー展開> ※ネタバレ有り
前述のとおり、小説全体に立ち込める雰囲気は私の好みでした。
しかし展開は、BL的な「お約束」が多く、容易にオチが想像できてしまうのが残念。
たとえば、
・桐嶋(水斗)が長山の愛人で、かつ彼の息子の影武者役をさせられている
・桐嶋が子どもがえりしたとき、樋口の彼に対する異常な過保護ぶり(これはこの作品の萌えポイントの位置づけですがね)
……BL小説らしいとも言えますが、ちょっと安易過ぎる印象を受けました。
そして、肝心のラストですが、成人男性としての自我を取り戻した桐嶋と樋口がのやりとりが、ぎこちなくて、ラストらしい色気はなくなってしまっていました。
お互い、何かにつけ遠慮が先行してしまっていて、桐嶋の精神が幼かったころのほうが感情表現がストレートで「恋愛小説」らしかったですね。

<総評>
お耽美な雰囲気、舞台装置はとてもうつくしく、ロマンティック。
ストーリー展開は、単純で分かりやすく、BL的「お約束」の詰め合わせといった印象。
これらのお約束を、そうこなくちゃ!と思える方か、マンネリと思ってしまうか。これが本作の評価を分けるポイントなのではないかと思います。
前者ならば、本作は大変楽しく読めると思います。
後者ならば、本作に物足りなさを感じてしまうかもしれません。

私個人の意見としては、やはり読者の予想の上を行くストーリー展開であれば、非常に高評価できた作品になったのに、と思います。

1

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