夜明けには好きと言って

yoakemae ni wa suki to itte

夜明けには好きと言って
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神29
  • 萌×229
  • 萌23
  • 中立4
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
22
得点
334
評価数
85
平均
4 / 5
神率
34.1%
著者
砂原糖子 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
夜明けには好きと言って
発売日
価格
¥552(税抜)  
ISBN
9784344806382

あらすじ

白坂一葉は、交通事故に遭ったのをきっかけに顔を整形、名前も変え別の人間として生きることに。
ホストクラブで働き始めた一葉は、同級生だった黒石篤成と再会。
かつて一葉は黒石に告白され、夏の間付き合っていたのだ。
同僚となった黒石は、一葉に好きだと告白する。
つらい過去を思い出しながらも再び黒石に惹かれていく一葉は…。

表題作夜明けには好きと言って

黒石篤成,25歳,ナンバーワンホスト
白坂一葉,25歳,別の人間として生きる

レビュー投稿数22

ホストと侮るなかれ

苦手だと思っていたホスト物。いやー、面白かった。

小さい頃から顔にコンプレックスがある白坂が、事故をきっかけに整形し、別の人物として生きていこうと上京。ホストクラブで働き始めるわけですが・・・そこには中学の同級生黒石が。

偶然が重なりすぎている気もしなくは無いですが、歌舞伎町に集ると考えれば、そう広いところでもないですから幼馴染と遭遇するのはアリかもしれませんね。
また、ホストクラブですから、一癖も二癖もある男や女が登場してくれるので、そんじょそこらの男しか出てこないBLと比べたら、よっぽど奥が深い作りになっているなと感じました。

親から刷り込まれたトラウマのようなコンプレックスって、ずっと引きずっちゃうでしょうね。他人からみればそんなにたいしたことでなければ余計に「コイツなに?」って思っちゃうんだろうし。そして、皆一言足りないから誤解が誤解を生み、いじめられたり疑心暗鬼になったり、どんどん悪い方へ行っちゃう…紆余曲折は多すぎるほどあるものの、白黒コンビがまとまってよかったよかった。
この二人、根本的にどこも悪くないのに、周りに振り回されちゃってるので、とことん可哀想なんですが、やってることが男前なのでそこのところがまたいいんです。

特に好きなのは、白坂が雨の中黒石の家を出たものの、気になって戻っちゃうシーン。このあとハッピーエンドで終わりそうなのに、残りのページがやけに多い、これまでもヤキモキしてるのにまださせるのかー?って感じですが好きだな。

そして、これとリンクしているお話が、「真夜中に降る光」になりますので、是非読んでください。

8

コンプレックスからの解放

ホストクラブが舞台の再会ものです。トラウマを持つ受けの視点で話が進んで行きます。白坂一葉(受)は、顔に対するコンプレックスに苦しんできました。それは、幼い頃に、義母に「気持ち悪い顔」と言われたことに遡ります。たかが顔、とは言えないですよね。義母の言葉は、「器量が悪い」という意味で発せられたものではなく、生さぬ仲の子供に対する悪意(とその母への嫉妬)から出たものでした。顔とは、その人を代表するもの。相手の顔を否定するとは、相手の存在そのものを否定することなのではないか、と思います。義母が否定したかったのは、一葉の器量ではなく、一葉の存在そのものだったのでしょう。結果として、一葉は自分の顔へのコンプレックスを植えつけられ、自分の顔を直視することができなくなり、「自分は駄目な人間だ」と自己否定へと陥ってしまい、さらには、他人と顔を合わせることもできなくなり、対人関係を築くことができなくなります。一葉は、自分の存在そのものを否定的に捉えてしまうことによって、他人と対話することができないできたのです。

リストラされ、再就職にも失敗した一葉は、事故(自殺未遂のようにも見えます。未必の自殺といったところでしょうか。)で重症を負います。その後、整形して、「一夜」という別の人間として人生を再出発させ、ホストになります。そして、勤め先のホストクラブで中学時代の同級生である黒石篤成(攻)と再会するのです。一葉と黒石は、中学時代ひと夏だけ付き合っていましたが、行き違いがあって、一葉は黒石に裏切られたと思い、彼をずっと恨んできました。そして、再会した篤成に復讐の念を抱くのですが、そんな一葉に篤成は「好きだ」と告白します。一葉の「顔が好きだ」と。

「顔」、それは一葉がそのために人生が上手く行かないと思い、ずっと嫌悪してきたもの。昔の自分と今の自分で違うのは顔だけ。結局は全て「顔の美醜」で決まってしまうのだ…そう一葉の心はやりきれなさに包まれます。篤成の好意はしかし、決して一葉の「顔」の美しさにだけ向けられたものではありませんでした。彼にとって、一葉の「顔」というのは、一葉の存在そのものだったのだと思います。篤成は、今も昔も言葉が足りないんですね。一葉は、復讐心から篤成を弄ぼうとして彼と付き合い始めますが、やがて彼の不器用ですが真面目で真っ直ぐな在り方に惹かれて行きます。

オチは、なかなか意表を突かれますが、私はとても共感しました。一葉がコンプレックスから解放され、本当の意味で生まれ変わって、心から笑えるようになった姿には心を打たれました。大切なのは、自分の価値を認め、自分という存在を愛すること。そう思わせてくれた、とても真摯な作品でした。

7

唯一の相手

口数の少ない無骨な先輩ホスト黒石×整形で人生再出発・繊細な白坂
初恋相手とのすれ違い後の再会。
ホストモノを初めて読みましたが、危惧したようなぎらぎらした感じや煌びやかな雰囲気は控えめで、じんわりと温かくなるお話です。タイトル通り切なくて少し甘い、全体を包むそんな空気感がとてもすきです。

整形をしてその後付き合いだすという流れに、最初は躊躇しました。いつかは真実がばれてしまうし、人工的な美しさに惹かれて恋に落ちるというのも、どうなんだろう…と。黒石は顔が好きだと告白の理由を言うので。
しかし最後にその引っ掛かりがするんと解けます。咽喉の小骨が取れるようなすっきりとした無理のない理由が隠されていました。

中学時代に付き合っていた黒石と白坂。ひと夏の恋と言うには余りにプラトニックでしたが、付き合うきっかけになる黒石の言葉が白坂にとって存在価値を感じられた唯一でした。そしてその恋が黒石にとっても26年間の唯一。
一途だったのは黒石だったのでしょう。10年越しの想いが実って付き合いだし、つれない態度を取られても、白坂が心を開いてくれるのをずっとじっと待っています。

最後は2人でこれからを開いていくというような、ささやかな希望のあるハッピーエンドです。呪縛から解かれた白坂と、その隣にいて見守るような立ち位置の黒石。
本当に真面目というか、恋に対して真摯な内容なのですが、黒石はちゃんと?むっつりです。無論ツボ。

2

手に入れたもの

好みの作品がないかなとちるちるでランダムに探していて、この作品のあらすじを読んだらどうも知っている話の気がする。でもちるちるの読了の本棚にも入っていないし、手元に本もないし、Kindleにもなし他の電子版にもなしと、うーんとずいぶん考えて思い出しました。以前CDを聴いたことがあったのです。
そっかそっかと、そうなるとどうしても読みたくなり、Kindle版を早速購入。

一葉は自分の顔にとてもコンプレックスを持っていた。継母には気持ち悪い顔で見るなと言われるくらいだった。
そんな一葉は24歳の若さでリストラされヤケになって車を走らせ大事故にあう。整形をしなければならないほど顔にひどいけがを負う。
新しい美しい顔を手に入れた一葉は一夜と言う新しい名でホストの職に就く。
そこで中学生時代の同級生で唯一心を通わせたと思っていた黒石に再会する。
一葉は後からその黒石が裏切っていたことを知り、整形で一葉とわからない黒石に復讐をしようとするが…

本当にこの作家さんは人の気持ちを表現するのが上手いなと作品を読むたびに思います。
一葉はコンプレックスをかかえ家族にも恵まれず学校生活も荒んだものでした。唯一希望だった黒岩との時間も裏切りと知り、リストラにあい事故にあい、散々なところから一葉が立ち直る物語。
黒岩との長い長いすれ違い。一葉の容赦ない言葉に黒岩も傷つきます。この辺りはお互いに辛いですね。切ないです。とても。

新しく手に入れた顔で自信を少しずつ取戻し、間違った方法ではあるけれど黒岩への復讐という目的があって前に進むことが出来た一葉。
そんな一葉を傷つきながらも支えやさしく接する黒岩に一葉は本当の意味で癒されていく様がとてもいいです。
外見ではなく心、気持ちの問題というのがよくわかる作品です。

お互いを求めているようで辛い状況が続くので最後に一葉がいろんなことから解放されて初めて黒岩を求めるところがたまりません!
ふたりが新たな生活を始めるシーンはとても爽快で嬉しい気分になりました。

2

そのままの君でいてほしい

BLCDと合わせてみると更に好きになった作品です。
砂原先生は個人的に好きな作家なんですが、数多く出されている作品の中でも
この小説は印象深い話で大好きです。

ホストという職業をしながら二人の距離が縮んでいくんですが、
復讐するというほのぐらい受けの目的があるわけで
途中はらはらする場面が幾度も訪れます。
受けのことをいじめてくる先輩ホストもいてむかむかするし、
寡黙な攻めの考えていることはさっぱりわからずにもやもやするし、
これいったいどうなるの!?と焦れるんですが、最後はハッピーエンドです!
受けの盛大な勘違いとそれによって引き起こされるすれ違いに大変萌えさせてもらいました!
この後はふたりで末永くおねがいしますー
最後まではらはらしながら見守っていたので
ふたりが幸せになってくれてとっても嬉しかったです。
勘違い、すれ違いネタが大好物の方は絶対に楽しめる作品です。ぜひぜひ。

1

攻めが魅力的でした〜♡

ホスト×ホスト、それもNo.1×No.2という組み合わせ。
私自身はホストクラブに足を運んだことはないのですが、この華やかな男だらけの世界には興味津々で、ホストものが大好物です!

『優しいプライド』に続く砂原先生によるホストもの。
こちらもめっちゃ面白かった!

継母に「気持ち悪い顔」と暴言を吐かれ続け、容姿に対するコンプレックスを持つ一葉。
陰気で人の目を見られない一葉は、会社をリストラされ、自暴自棄のまま交通事故に遭います。
事故を機に、一葉は顔を整形して過去を捨ててやり直すことにするのですがーー…

この、整形して別人に成りすます……と、いう設定が面白い!
そして、ホストとしての第一歩を踏み出そうという時に出会ったのが、一葉の因縁の相手・黒石です。

罰ゲームで告白された黒石に本気になってしまった一葉は切ないのですが、黒石には黒石の本心があるのですよね。
この黒石は何ともホストらしくないホスト。
寡黙で誠実で一途で、一葉にだけ向けられるムッツリさにも萌え上がりました♡
個人的に、黒石かめっちゃツボでした〜!

中学の時に一葉を〝ホモ〟と言って虐めていた相手や、大学時代に〝20点〟と揶揄していた女子が出てきて、一葉の傷を抉り出すのが辛かった。
それでも、全て黒石の一途さに救われたなあ。

整形がバレてどうなっちゃうの……と、不安でいっぱいでしたが、まさかのオチ。
コンプレックスのせいで、あまり鏡を見てなかったかな?
まぁ、人は自信や身につけるもので雰囲気ガラッと変わりますもんね。まぁ、よかったよかった。

エロも描き方が上手いですねー。めちゃめちゃ官能的。
ずぶ濡れのスーツを脱がす描写にも萌えました♡

バーで黒字が出るようになったら犬森を雇ってあげて欲しいな。
この子がシリアスな雰囲気を中和させてくれて、すごく和みました。

0

雨降って地固まる

「萌x2」か「萌」で迷って…色々あったけれど立ち直った一葉へのエールを込めて「萌x2」評価です。

砂原さんの手に掛かるとホストBLもこんな仕上がりになるんだなぁと感心しました。整形して名前を変え、別人として生きようとしたのはどちらかというとネガティブな理由からだった一葉が、過去とも黒石ともちゃんと向き合って、自分を取り戻す物語…だと思います。

朴訥な攻が好きなので、黒石がとても良かったです。過去についてはもうちょっと言葉を補ってあげれば良かったのに、と思わなくもなかったですが、このお話は一葉だけでなく黒石が過去と向き合う姿勢も描かれているので、二人にとっては辛くて切なくても、今に繋がるステップだったのかな。

「雨降って地固まる」という表現がぴったりなエンディングに、素直に良かったなぁと思いました。

3

メタモルフォーゼ?

私は卑屈な受けが結構好きなんですが、BL作品て美形が出てくる作品が多くて、時々その卑屈さに違和感というか説得力が無い作品に当たってしまい、orzとなることもあるんですが、こちらの作品は大当たりでした。
主人公で受けの一葉の卑屈ぶりは中々リアリティがある気がしました。小さい頃から後妻さんに不細工だ何だって言われたらそりゃ暗くなりますし、暗いからいじめられてさらに自信が無くなって…。好きだって言ってくれた相手にも裏切られたとあってはもう決定打に加えダメ押しの一撃食らった感あります。
そんな一葉が顔が変わった(という思い込みをした)ことで、ホストという、ある意味自信もコミュ力も必要な職業で成功する様も下克上感あって面白かったです。
黒石との関係で、黒石が好きだって気持ちと、恨んでるって気持ちで、戸惑って苦悩する一葉の心理描写は中々リアルなんじゃないかなと思いました。好きだけど心の底からは信用できない。それが苦しい。という感じが伝わってきました。
徐々に距離が近くなっていく構成が面白く作品にとても合っていて、ドキドキしながらページをめくりました。
また黒石の純朴さ、一葉を想う懸命さが、一葉に対して事情や過去を問い詰めないことで伝わってきました。無理やり聞き出したりせず、一葉が本当に話したいと想う瞬間を待つのは一葉のことをわかっていて尚且つそれをじっくり待てるのはやっぱり愛かなと思いました。

蛇足ですが、毎度思うのですが私は砂原先生の濡れ場描写がとても好きです!!!!特に今回はとても好みでした笑
ねちねち攻め続ける黒石も可愛らしい一葉も読んでてものすごく萌えました笑

2

少しちぐはぐ…。

もう少し整形の下りがうまくいかなかったかなぁと思いました。
もともと自分の顔を醜いと思っていた一葉ですが、整形して別人のようになったはじめの設定から、後半、雰囲気は変わったけどわからないほどではないという設定になってしまったのは残念。
また、黒石の寡黙だけど抜きん出た接客でNo. 1なのは良いとして、そんなキャラの黒石が一葉に振られて雨の中泣いたりするのはマンガチックではあるけど、どうもチグハグな印象を受けた。
幅広く色んな作品を書かれる作家さんなので、今後も楽しみに新刊を待ちたい。

0

顔のコンプレックスは抱えてしまうと根深い

2005年刊。
自身の顔の醜さが原因で周囲に蔑まれていると思っていた一葉は、20代半ばにしてリストラに遭い、再就職に回った面接先全てで不採用となる。
どん底の気持ちが引き金となって死ぬ間際の事故を起こして大怪我を負った一葉は、九死に一生を得て吹っ切れたものもあったのか、顔を変えて過去を捨てたつもりで上京する。

一葉の顔に対するコンプレックスの根深さはネガティブながらも共感を汲み取れるものがあった。
冒頭にある一葉の”顔を治す為の手術”って整形とは違うんじゃない?って引っ掛かりは、クライマックスで「ああ、やっぱりね」となるが、でもまぁ生まれ変わったと思い込める強いきっかけが必要だった訳だ。

上京してホストクラブを紹介された一葉は、皮肉にも過去の苦い思い出となった黒石と再会する。
一葉の感情は彼への復讐というよりも『ざまぁ見ろ!!』を見せつけたいかのようだが、そんな痛々しさを包むような黒石のフォローに包容力を感じる。

既にトップホストである黒石は店から離れると普段着はTシャツにジャージ、住まいは昭和の面影が色濃い平屋と、センスとはかけ離れたギャップの持ち主だ。
一葉と離れていた間の黒石の境遇も切ないものがあるが、ホストに染まり切らない彼の素朴さ切実さにほっとできる。

実はこの話、メインは復讐ではなく黒石と一葉の過去の初恋の拗れの修復にある。黒石にとっては親の都合で転校しただけで、一葉への一途な想いは消える事がなかったので、一葉が絆されていく様子を待つ辛抱強さは健気なものだ。
しかし黒石だけでなく、金埼といい一葉の元知人といい偶然の再会率が半端ない。
この辺りは都合が良すぎる気もするが、一葉が顔のコンプレックスという呪縛を断ち切るには必要な過程として受け入れられる。
ぶち切れた一葉が金埼に向かって殴り掛かる場面は結構好きだな。

まぁ整形に対しての是非はともかく、一葉が自ら立ち直った事、長年の拗れを解消して黒石と無事に両想いになった事、ホストを引退して立ち上げた二人の店のオープンを祝して乾杯。

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