誰もが誰かの太陽になれる――

エデンの太陽

Eden no taiyou

エデンの太陽
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神27
  • 萌×211
  • 萌6
  • 中立1
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
5
得点
198
評価数
46
平均
4.3 / 5
神率
58.7%
著者
朝丘戻 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
カズアキ 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
シリーズ
夜明けの嘘と青とブランコ
発売日
価格
¥740(税抜)  
ISBN
9784866572703

あらすじ

人を癒やす人間になりたいと願ってデリホスで働いていた勇は、心に傷を負った青年・穏陽と出会う。
彼の孤独や誠実さを知った勇は「客とホスト」として関係を深めていくが、その温かな時間は些細なすれ違いとともに終わりを告げる。
時が経ち、レンタルショップ『エデン』で再会したふたり。
次第に勇は穏陽の望む太陽みたいな男を志すようになるけれど、恋をしたせいで心は欲で汚れるばかりで――。

表題作エデンの太陽

前山穏陽,23〜29歳
秋谷勇,18〜25歳

その他の収録作品

  • エデン
  • 太陽
  • その後のエデン
  • あとがき

レビュー投稿数5

大好きすぎて、上手く語れません。

待ちに待った作品です。
『エデンの初恋』のスピンオフですが、こちらを先に読んでも大丈夫な内容になってます。
母親の幸いの為にデリホスで働く勇。様々な事に傷つけられ生きる希望がなくなった穏陽。2人が客とホストとしてデリホスで出逢い、身体の関係を持たずに、お互いを知っていく。
穏陽は、死を選んだ時に出会った勇の神々しさに惹かれ神や太陽と崇め、自分を信者という徹底ぶり。嫉妬を感じたりするが、信者としての考えが強くそれ以上に踏み込むなんて恐れ多いという。
勇は、客として接していた穏陽に好感を持つが、自分を太陽と崇めてくることに、彼の太陽でいようとし、本当の自分の醜さや気持ちを出せずにいた。

勇は人を見た目で判断しないで、中身で付き合うすばらしい子。これを凄く感じたのは、穏陽が太ってぷにはるになった時。あまり体型に関して記述がなく、でも前作では要が穏陽を見て体型の事を言っているので、要目線での穏陽の体型を想像していました。本作では実は穏陽はあまり太ってないのでは?と思って読み進めたら、後半ダイエットをして勇を迎える穏陽が!!
この時に、勇は人の見た目よりも中身を大切にする子なんだ!と胸にじわりときました。
だからこそ、勇の周りは素晴らしい人ばかり。
勇が泣いて今までを語る穏陽に「大丈夫だよ穏陽。世界はちゃんとひろいよ。あったかいところもあるんだよ」と言った言葉が泣きそうになりました。
後半で穏陽が勇に言った「勇君が大事に想う人たちは、同じように勇君のことを大事に想っているんだよ!」で、あんなにおどおどしていた穏陽の変化や、そこに至るまでのことが巡り、幸せな気持ちになりました。

朝丘先生の作品は、一つの恋をじっくりと描かれ、読者を温かく幸せな気持ちにさせてくれます。私は何度も助けられ、癒されてきました。
ぜひ、この感覚をたくさんの方に感じて貰いたいと思います。読んでみてください。

3

エデンシリーズ

エデンシリーズは、3冊。
丁寧な描写だと、この頁数になると思う。三冊とも分厚い。
迷った時に読むと、ヒントをえられるかもしれないシリーズだと思う。
自分を優先しない選択について、考えてしまった。

①夜明けの嘘と青とブランコ 眞山聡士 楠木志生
2015/12/12

②エデンの初恋 柏樹透 佐東要 レンタルショップ『エデン』
2018年11月13日

③エデンの太陽  前山穏陽 秋谷勇 レンタルショップ『エデン』
2019/7/13

発刊順だと、上記の通りになるけれど、
「エデンの太陽」は、イサムがデリホスに勤めていた頃の話なので、
内容の順番だと、
エデンの太陽 ➡ エデンの初恋 になる。

イサムは、さばさばして表に出さない性格だけど、苦労している。
「エデンの初恋」には、デリホス当時の熱心な客が辞めた後もレンタルビデオショップにに通ったり、
イサムは、人気がある。
でも、恋人がいる事には「エデンの初恋」では触れていない。
「エデンの太陽」で、初めてイサムの恋について触れている。 

2

愛情とは何ぞやを描いた壮大なストーリー

作家買い。

朝丘作品はちょっとずつリンクしている作品って多い気がしますが、この作品も『エデンの初恋』のスピンオフ作品です。『エデンの初恋』の受けさん・要が働いていたレンタルショップ「エデン」で、要のバイト仲間であり友人でもあったイサムが、今作品の主人公。

『エデンの初恋』が未読でも理解できないことはないですが、読んでいた方がより深く人間関係が把握できるので、未読の方はぜひ。

そして朝丘作品ならでは、と言っていいでしょう。
今作品も、めっちゃ分厚いです…。ヘタしたら薄い文庫本2冊分くらいの分量があるんじゃないかい?という分厚さです。


ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






主人公はゲイ専門デルヘリ「EDEN」で、源氏名・ユウと名乗りホストとして働く勇(イサム)。
彼は母子家庭で育つが、愛情いっぱいに育ててくれた母親や、母親が不在の時に世話をしてくれた隣人のおかげでまっすぐ育ってきた。

母親やお隣さん夫婦のように、人を癒す人間になりたい。
早くお金を稼いで、自分のことは後回しにして勇を育ててくれた母親に恩返しがしたい。

そんな思いから、デルヘリで働き収入を得ている。

そんな彼のもとに一人の客がやってくる。
穏陽と名乗るその青年は子ども時代から長く続いたいじめと、現在働くブラック企業での陰湿な対応に疲れ果て自己肯定感が持てない青年だった。

そんな穏陽に明るく接する勇だが、勇に救われ穏陽は少しずつ明るさを取り戻していく。

けれど彼らはデルヘリで客を取るホストと、ホストを買う客という立場でしかない。少しずつ距離を縮めていく二人だったが、ちょっとした勘違いから決別し―。

というお話。

『エデンの初恋』で、飄々とした、明るく前向きな青年として登場していたイサムですが、彼もまた、過酷な環境下にいる。デルヘリで働いていたことで、バイトを首になったり、いじめられたりする。

勇はデルヘリで働いていたことを隠さないんですね。みんなに堂々と言ってしまう。

デルヘリで働いていたことを恥だと思っていないから。
そして、自分の素を受け入れてくれない人とは、「友人」になる気がないから。

それでへこんだり傷ついたりすることも多々あるのですが、それでも彼がそういった行動をとれるのは、彼が強い人だからなんですよね。彼には母親や隣人たちから、無償の愛情を注いでもらったというしっかりとした根っこがあるからかなと思いました。

どんな自分でも受け入れ愛してもらった。
その記憶が、勇を強くしている。

でも、みんながみんな、勇のように強くはない。
作中、勇が兄と慕う人物が自ら命を絶ってしまったりするシーンがあります。

そして、攻めの穏陽もまたしかり。

ずっと苛め抜かれてきた穏陽は、自己肯定感が極端に低い。
そんな穏陽が、勇と出会い、人を愛することを知り、そして強くなっていく。

はじめは部屋に引きこもり、ネットの世界だけが彼と外の世界をつなぐ縁だった。おどおどして話すのも苦手。そんな彼が、少しずつ成長していく。

そのままあっさりと恋人同士になるのかな。

そんな風に思いつつ読み進めましたが。

いやいや、この分厚さですから。
そんなわけないよ、という。

一度二人は勇の勘違いから決別してしまいます。
これがなんとも切ない…。
穏陽の気持ちを慮ると、彼が可哀そうで。

でも、再び再開します。

レンタルショップ「エデン」で。
「EDEN」をやめた勇が働きだしたのが「エデン」。そして穏陽はそこの常連さん。

再開し、勇が自分の勘違いに気づいたことで、二人の時間は再び動き出すのですが。

この二人の恋というベクトルの進みのなんと遅いことか。
ジレジレ、モダモダ進む恋の行方はいかに。

でも、ゆっくり進むのには理由がある。
お互い、相手は自分以外の人のことが好き、と勘違いしてるからなんですね。そして、相手を想う気持ちが強いからこそ、そんな勘違いをしてしまったわけで。

何なの、この子たち…。
可愛すぎるんですけど。

ホストと客、という立場で出会った二人ですが、濡れ場は最後の最後までなし。
穏陽が、ユウを崇めすぎててセックスなんてとてもじゃないけどできない。
という可愛らしい理由なんですけども。

自分の足りないところを補い合うようなまさに割れ鍋に綴じ蓋な二人で、じれったく進む二人の恋を激しく応援してしまいました。

勇の良き友人であり同僚でもある要(と柏樹さん)もちょくちょく登場していて、それもすごく嬉しかった。

そしてタイトルがいいよねえ・・・。

デルヘリ「EDEN」。
レンタルショップ「エデン」。
そして、勇の店である「えでん」。

勇という青年を形成してきた沢山の「エデン」たち。

『エデンの太陽』。

勇と穏陽。
お互いが、お互いの太陽なのだと。

途中、いじめの描写とか、自死の描写とか、ゲイに対する偏見とか、痛い展開も多々ありますが、それでもこの作品を通して描かれていたのは「愛すること」そして「愛されること」の素晴らしさと、その意義だったように思います。

9

ゆっくり長い

「エデンの初恋」のスピンオフ。あちらで「ええ子やなー」と思っていたイサムと前山さんのゆっくり長ーい恋物語でした。きゅんとするところ、良いなーと思う所は多々あれど、若干長いなと感じてしまったので萌にしました。190Pほどのお話2編+後日談3P+あとがき+カズアキ先生のあとがき1P。

ゲイ専門のデリバリーホストをやっているユウ。なんだか豪華なホテルに呼び出されたんですが、そこにいるお客さんは、とっても不慣れそうでガッチガチに緊張しまくっていて23歳と聞いている、髪の毛がぼっさぼさの痩せている男性。コミュ障すぎるのであみだくじでセックスするしないを決めようとしたところ、「しない」となってしまい、お客を癒すことにプライドを感じていたユウはぷんぷんオカンムリ。なんとか話をして癒そうとして・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
かーちゃん(受け母、男前)、じーちゃんばーちゃん(ご近所の居酒屋経営夫婦)、喜田さん(!!!!!!!!!!!言葉にならない。デリホスの先輩)、中西さん(イケメンおやじ、ユウの客)、攻めさんの会社同僚(クズ、クズ以外少々)、夏音(かお、受けの大学での友人♀)、エデンの初恋のカプ、大成(喜田さんの弟)ぐらいかな。かーちゃんじーちゃんばーちゃん、人間としてとても素敵だと思います。

++内容に触れる感想

受けさんはいい子なんだけど、性的なタブー感覚がちょっと薄くって、それで大学行ってから苛められたり大変。ピュアすぎる?まっすぐすぎる?強い子。デリホスやってたなんて言ったら、ドン引きする人もいるでしょうに、警戒心がなさすぎるというか。

攻めさんはゲイということで長らく苛められていて、会社ではパワハラにあっていてと、まあ壮絶。受けさんを初めて指名した時も、これを最後にして死のうとしていたという方。

二人ともあんまり普通じゃない経歴の方ですが、そんな二人が不器用ながらすれ違いながらも少しずつ寄り添って心を近づけていく、そんなお話でした。
いいなあああああと思う所も多々あれど、やっぱりほんのちょっとだけ長いなーと思うところもあった感じです。

前半に登場するサブキャラの喜田さんはめちゃくちゃ大切にしたかったキャラでしたが・・・残念。本当に残念。もう一度会いたいです。

人生厳しい目にもあいながら、ゆっくりゆっくり進んでいく関係が大好きな方でしたら是非。

2

主体は降り積もる会話でした。

前作「エデンの初恋」のスピンオフ作品であり、イラスト・文章ともに共通の世界観です。
異なるのはメインカプのキャラクター。
主人公で受となるイサム君は複雑な過去と現在を抱えながらも根っからの陽キャとして真っ直ぐ生きています。
対して攻の穏陽君は超コミュ障の陰キャof陰キャ。
「エデンの初恋」チームのお上品でシックでふわふわ似た者同士な雰囲気とは打って変わって、どうにも対照的な二人です。

ちなみに前作を読んでおいた方が良いか?という点については、両方読んでおいた方がいいけれど、どちらが先でも構わないという結論に至りました。ただ私の場合は前作でイサムが掴み切れずもやっとしてしまったので太陽から読んでいた方がすっきりしていたかも。もしシリーズ未読かつあらすじでイサムが気になる方は、はじめから「エデンの太陽」→「エデンの初恋」の順の方がしっくり来るのではと予想します。時系列的にも特に問題は生じません。

さて、前作では正直キャラを掴み切れずにいたイサム君ですが、本作ではこれでもかというほどにフォーカスされています。
一応受攻両視点なのですが穏陽くん視点でも、大体はイサム君の観察日記みたいになっていますのでほぼイサム色。その様々な描写から見えるのはイサムのアブノーマル気味な生い立ち、まだ若く未熟な考えや行動。誰かの癒し・太陽であることへのこだわり。
独特のとがり感やざらつきがあり、彼に感情移入できるか?と言われると中々厳しい面もありました。
ただ、彼の主張はしっかりしている。
多少偏りはあるけれど、心から思って行動しているという一貫性が1冊ぶれずに描かれています。そのおかげか前作よりもキャラは掴みやすくなり、長さの割に読みやすい印象でした。ぶれないって大事。

穏陽くんも結構こだわりが強いというか、一途というか、一直線というか。
コミュ障かと思えば、けっこうグイグイくるなー、以外と我が強い?という所もあって可愛いらしいです。

今回は最初から最後まで感情移入し一緒にハラハラ、ドキドキ、というよりは、ただただ二人の出会いから恋人になるまでを壁になって見守るタイプのお話でした。
途中で「おーいそっちじゃないよー」と声をかけたくなるけれど、二人は勝手に遠回りすることもしばしば。少し単調で退屈で焦点合ってる??と思える場面もままあります。
さくさくっと起承転結、展開が命!みたいなエンタメ系ばかりを読んでいると違和感があるでしょう。はっきり言って文章やストーリーには他の朝丘作品と比較してもこぶしが足りません。けれどもその分淡々と言葉やシーンを降り積もらせて最後に完成する世界感は、他では味わえない余韻を生み出します。

この独特のスタイルを「単なるキャラの心情の吐露と会話の羅列」と感じるか、「最後の余韻を生む演出の一つ」と捉えるかは読み手次第な部分もあると思います。
どのくらいその物語に入りこめているのか、どのくらいそのカプの成就を期待しているのか。

「誰かの太陽」というディープになりかねないテーマ。だからこそ、くっきりはっきりさせすぎないストーリーテリングの方がバランス良くなるのかもしれませんね。

まずは通読を。感想は最後まで読んで二人が結ばれてからゆっくりと。けっして途中でやめないで。そんな読み方をお勧めしたくなる作品でした。

1

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