3万人の腐女子、腐男子が選んだ 2011年度BLアワード! 2011年1月~2012年1月まで今年度最強のBLを総選挙!!

WatcherからPlayerへ~腐男子はリアルホモの現実を見るか?IN 2011

このたびちるちる様からお呼びをいただきBLアワードへ寄稿させていただくことになりました、パタリロで腐って20年の腐男子・・・いやもう男子とは言わないか。腐紳士の眠れる森です。よろしくお願いします。

あぁ時代が変わったのかな

『「腐男子」眠れる森さんから見た「BL界2011年度」の気になるトピック』という事で御指名がありましたので、今回は2011年の腐男子的トピックと腐男子をテーマに置いた作品を紹介して振り返ろうと思います。

まず「あぁ時代が変わったのかな」と思うトピックからひとつ。
本屋さんのBLのコーナーというと普通はそこに女子が一人、多くても二、三人バラバラいるのが一つの情景で、そこに腐男子(自分とか)が乱入しようものなら場の空気が変わるのですが、2011年:ジュンク堂梅田店。そこで私は従来ではありえない光景を見ることになりました。

BL新刊棚で見たのは男子1名、男子1名、男子1名の合計3人。そこに入ろうとする男子1名(私)
そしてその状況に割り込めないでおろおろする女子1名・・・逆なら日常の光景ですが。

「・・・そうか、もう男子がBL読むこと自体、奇態とは言い切れなくなったのだな」
と思いながら普段より割り込みやすい壁に突入して、速やかにお目当ての本を購入して帰った次第です。あの女の子は日常から逸脱した風景の中で目的の本を買えたのでしょうか。

そんな2011年なので腐男子作品を探してみると、今年は特に「見た、聞いたBLそのものになっちゃった!」という物に良作があったように感じます。

そもそも「腐男子」という存在がBL的にニュートラルな存在だと思われます。

男だけど男同士が愛し合うのを見るのが好きという時点で当然ホモフォビア(ホモ嫌い)なわけがありません。だからといって「ホモだからBLが好き」なのか、というとそういうもんじゃない。そもそも典型的なリアルゲイはBLはそんなに好きじゃない(実話)というか、基本的にたおやかなBL受けを見て「女子と間違う」奴もいるくらいです。

でも、腐男子は「男同士で恋愛するとどうなるのか」を普段から本で見まくっているためホモでなくても「自分がその中に入っちゃってるよ~」というのが分かっちゃうわけです、「まさか自分じゃないだろう」と思いながら生理的に嫌いなわけじゃないから流される。でも流される自分が物語の中の誰かさんそのものなんだようわぁっ!・・・とばたばたするのが腐男子なわけです。普通の男子にはあって当然のストッパーがない。
男同士が恋愛しちゃうことについて分からないから不安なので無く分かるから不安。そこが腐男子BLの特徴です。

その分めでたく結ばれたあとのエッチになると「ああ、こういう感じなのか」が形としてわかってるので、してもされちゃってもそれが自然に受け入れられてしまう所も感じられます。というか、どういう本を読んでもエッチシーンになるとつい目の集中力が7割増し(当人感)になるのが男という生き物です。「こうすればできる」ということを覚えてないわけがありません。

演じているうちに本当にそのものになる

そんな「傍観者が当事者になったら」な腐男子BLからまず一つ目。
まずはライトに「BLを題材としたカフェ」をテーマにした『眼鏡cafeGLASS 』。
主人公の虎太郎君は正確には腐男子ではないのですが、メガネを脱出できないという現状を諦めるべくメガネカフェにアルバイト入店したらそこはBL大好き腐女子が集まる上に実際にBLを演じなければならない!というまさに毎日が「二次元と三次元のはざま」みたいな空間。
火のない所に煙を立てるべくお客の脳内ではカップリングが花盛りなのですが当人たちは演じてるだけで別に実際には付き合ってるという事もない(除くオーナーと虎太郎)ので、腐男子BLとしての印象は薄いのですが、その分ズッコケ系のかわいらしさに萌える要素は強い作品。
もう少し続くとここから実際にオーナーと虎太郎が付き合いだして、実際にBLカフェで繰り広げられるようなお芝居のような恋愛がつながっていくのでしょうか。

さらに「演じているうちに本当にそのものになる」という要素が強いのが『もえごえ』。こちらの主人公は売れっ子BL作家・藤原×BL初挑戦の声優・山中。だいぶ腐男子の香りが強くなってきました。
他のCDとかでちょいで出ていた山中の声に惚れ込んでしまった藤原先生が立場的に上という状況もあってBLの受けの演技指導という名目でおしりをいじる!指導をしてしまうわけです。
これぞまさに「BLドラマの具現化!」なわけですね。
こういう「ご指導もの」は基本的に教える方に経験値があるはずなのですが、この作品はさらに実は「年下でヘタレで攻めの経験がない」というねじれ要素までも含んでしまうので、それゆえにドタバタした面白味がも出ているのです。
ただ、この本の場合は「お互いエッチができること」はわかっていながら、実際のエッチはドラマのようにうまくいかないという面が発覚してしまい、そこが山中の演技に悪影響・・・とぐるぐるする逡巡が見られます。最終的には潤滑剤を使って結ばれるのですが、そういう所はややBLよりはリアルに近いでしょうか。

共通点があれば男だって恋が始まる

上の2冊は「演じているうちに本物に・・・」でしたがよりリアル。お互いのときめきをきっかけに腐る話、『王子、池袋系。』。
池袋と言えば執事喫茶や学園喫茶、あと「Cafe801」もある「腐の聖地」の面を待つ街ですが、イケメンのリーマン・甘利×アニメショップ店員の朝比奈。元々はどちらもゲーマーで腐の住人ではありません。
しかし「どっちもオタク」という共通点があり、ゲームを通じて仲良くなるうちにあれ?と思うときめきの違和感を覚えるわけです。そこで甘利が手にするのがBLの作品だったという。まぁオタクショップとBLの距離はほぼミニマムゼロですからねぇ。 そこから同じ作品に朝比奈も興味を持ち(その時点でフラグ立ってるよ!)読むうちに二人には「男同士で恋をしてもいいんだ」という概念が誕生するのです。そして結ばれるのですが・・・
「男同士でもできるって事はヒナちゃんも分かるでしょ」
お互い男同士初体験なのに不自然さと誤解がない。そこが腐男子エッチの醍醐味でもあります。

カムフラージュの言葉で自爆

最後に「腐男子はホモではないのに!」な作品『君色リアル。』(幻冬舎コミックス)。自覚ありなホモ(恐らく)後輩・白河×腐男子な先輩・桜の組合せ。一般ピープルにばれないよう腐男子を続けていた桜は男同士の絡み合うような本をうっかり一般ピープルに白河に見られてしまった事をカムフラージュするためについた言葉で自爆します。
「本当はホモやねん!」
それ、もっとやばいフレーズなんですが・・・そのフレーズがはっきり男の先輩相手に惚れ込んでいた白河に火をつけ、その光景の移動に対して桜は逐一「BLでみるような流されっぷり」をする自分を見る羽目になってしまうのです。
後編の桜が書いていたBL小説をまともに願望と信じ込む白河の話も含め、二次元と三次元(と言っても二次元の中の三次元ですが)のボーダーレス具合がまさに腐男子BLのうまさそのものと言っていいのではないでしょうか?

以上4編紹介してみましたが「元々ホモである」BLとも「元々ノンケである」BLとも微妙に違う温度感、感じ取れましたでしょうか?
作者も読者も女性が大多数、という状況はおそらく未来永劫変わらない(というか変わっていただきたくない)し、女性から「男同士の恋愛についてみるのは好きだが実際に経験するのは思いつかない男性」という複雑な心理状態を想像するのは難しいわけですが、幸いゲイ向けではないいわゆる女性向けBLの絵を書く男性の作者さんも何名もいらっしゃいますし(彼らは実際には別にガチゲイではない)、2012年以降もちょくちょくこういう空気感の作品が出てきてもいいのではないかな?と思う昨今です。

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